稲盛和夫【京セラ株式会社名誉会長 稲盛財団理事長】 社会/国際部門

受賞年月

平成17年2月

受賞理由

多年、我が国の産業・科学技術の振興に寄与し、更にはその人生哲学を通して我が国の国際貢献に尽くした功績

受賞者の経歴

【学歴】
昭和30年(1955)  3月 鹿児島大学工学部卒業
昭和63年(1988)  5月 (米国)アルフレッド大学 名誉博士 ・ (米国)デンバー大学 名誉博士
平成  7年(1995)  6月 (英国)クランフィールド大学 名誉博士
平成  8年(1996)  5月 (米国)サンディエゴ大学 名誉博士
平成11年(1999)10月 鹿児島大学 名誉博士
平成13年(2001)  5月 (米国)ペンシルバニア州立大学 名誉理学博士
【履歴事項】
昭和34年(1959)  4月 京都セラミック㈱(現京セラ㈱)を設立、取締役技術部長就任
昭和41年(1966)  5月 同社代表取締役社長就任
昭和59年(1984)  4月 財団法人稲盛財団を設立、理事長就任(現職)
昭和59年(1984)  6月 第二電電㈱を設立、代表取締役会長就任
昭和60年(1985)  6月 京セラ㈱代表取締役会長就任
平成  2年(1990)  6月 ㈱タイトー取締役会長就任
平成  9年(1997)  6月 京セラ㈱取締役名誉会長就任(現職)
同            ㈱タイトー取締役名誉会長就任(現職)
同            第二電電㈱取締役名誉会長就任
平成12年(2000)10月 第二電電㈱他二社との合併により㈱ディーディーアイ(現KDDI㈱)発足
同社取締役名誉会長就任
平成12年(2000)11月 セルラー各社合併により(株)エーユー(au)発足 同社取締役名誉会長就任
平成13年(2001)  6月 KDDI ㈱最高顧問就任(現職)
平成15年(2003)  5月 社会福祉法人盛和福祉会を設立、理事長就任(現職)
平成15年(2003)  7月 財団法人稲盛福祉財団を設立、理事長就任(現職)
平成16年(2004)10月 DDIポケット㈱取締役最高顧問就任(現職)
【受章・受賞】
昭和47年(1972)  3月 大河内記念財団「第18回大河内記念生産特賞」受賞
昭和49年(1974)  4月 「第16回科学技術庁長官賞」受賞
昭和54年(1979)10月 (米国カリフォルニア州)サンディエゴ市名誉市民
昭和56年(1981)  1月 伴記念会「伴記念賞名誉賞」受賞
昭和59年(1984)  5月 「紫綬褒章」受章
昭和61年(1986)  7月 「外務大臣表彰」受彰
平成  6年(1994)10月 「京都市国際交流賞」受賞
平成  7年(1995)  4月 (米国)ケース・ウェスタン大「T. Keith GlennanLecturer」選出
平成  8年(1996)10月 (中国広東省)東莞市栄誉市民
平成  8年(1996)12月 第7回東洋経済賞「パースン・オブ・ザ・イヤー」受賞
平成10年(1998)  7月 International Union of Materials「Lifetime of Innovation Award」受賞
平成10年(1998)10月 「京都市自治百周年特別表彰」受彰
平成12年(2000)  9月 ブラジル共和国「南十字勲章(クルゼイロ・ド・スル)」受章
平成13年(2001)  6月 「京都府特別功労賞」受賞
平成13年(2001)10月 「京都市 市民栄誉賞」受賞
平成13年(2001)12月 (中国貴州省)貴陽市栄誉市民
平成15年(2003)12月 「アンドリュー・カーネギー博愛賞」受賞
平成16年(2004)  6月 中国光明日報「第1回光明公益賞 最優秀個人賞」受賞
【公職歴】
昭和59年(1984)11月 スウェーデン王立科学技術アカデミー 海外特別会員(現在に至る)
昭和60年(1985)  4月 社団法人京都経済同友会 代表幹事(平成元年4月まで)
昭和63年(1988)  5月 社団法人日本セラミックス協会 会長(平成4年5月まで)
平成  2年(1990)10月 ワシントン・カーネギー協会 理事(平成14年5月まで)
平成  3年(1991)  2月 第3次臨時行政改革推進審議会 専門委員、世界の中の日本部会長(平成4年6月まで)
平成  4年(1992)10月 第3次臨時行政改革推進審議会 専門委員、政府の役割グループ主査(平成5年10月まで)
平成  6年(1994)  4月 財団法人国際高等研究所 専務理事(平成10年3月まで)
平成  6年(1994)  5月 社団法人関西経済連合会 副会長(平成7年5月まで)
平成  6年(1994)  6月 財団法人関西文化学術研究都市推進機構 理事長(平成7年6月まで)
平成  7年(1995)  1月 京都府商工会議所連合会 会長(平成13年2月まで)
平成  7年(1995)  1月 京都商工会議所 会頭(平成13年2月まで)
平成  7年(1995)  4月 日本商工会議所 副会頭(平成13年2月まで)
平成  7年(1995)  7月 財団法人京都大学後援会 理事・副会長(現在に至る)
平成  7年(1995)  9月 財団法人アジア太平洋観光交流センター会長(平成12年5月まで)
平成  9年(1997)  4月 財団法人全国篤志面接委員連盟 会長(平成14年5月まで)
平成10年(1998)  4月 京都経済団体協議会 会長(現在に至る)
平成11年(1999)  4月 アメリカン・セラミック協会Distinguished Lifetime Member(現在に至る)
平成13年(2001)  2月 京都商工会議所 名誉会頭(現在に至る)
平成13年(2001)  5月 中国友好平和発展基金会 高級顧問(稲盛京セラ西部開発奨学基金)(現在に至る)
平成13年(2001)10月 (中国)天津市人民政府経済顧問(現在に至る)
平成14年(2002)  3月 (南米)パラグァイ共和国 名誉領事(現在に至る)
平成14年(2002)  5月 ワシントン・カーネギー協会 名誉理事(現在に至る)
平成15年(2003)  4月 京都商工会議所青年部 特別顧問(平成16年3月まで)

受賞者の業績

稲盛和夫氏は、1932年1月、鹿児島市で生まれた。1955年、鹿児島大学工学部応用化学科を卒業、京都の碍子(がいし)製造会社に就職した。当時脚光を浴びつつあった特殊磁器の開発に従事し、新しいセラミックス材料の開発に成功するが、1958年に同社を退職。職場の上司や部下の要請を受け、固有のファインセラミックス技術をベースとして、新会社の設立をめざす。
1959年4月、支援者からの出資を得て、従業員28名、資本金300万円で、ファインセラミックスメーカー、京都セラミック株式会社(現京セラ株式会社)を設立した。ファインセラミックスの特長を活かした、様々な部品の供給を通じて、当時勃興期にあったエレクトロニクス産業の発展に貢献する。
また研究開発に努め、新材料としてのファインセラミックスの多面的な活用を図った。ICパッケージをはじめ各種電子部品の供給に留まらず、製紙・化学など、各種工業用部品の供給を通じて、ファインセラミックスを工業用材料として確立させ、広く普及させるとともに、その特性を活かした各種製品の供給を通じて、京セラをファインセラミックスのトップメーカーに急成長させた。
またその後、事業の多角化(垂直展開)を図り、太陽電池をはじめ携帯電話やPHSなどの通信機器、プリンタや複写機などの情報機器、カメラ等光学機器などの完成品ビジネスに展開した。現在では、同社は経営コンサルティング事業からホテル事業、アミューズメント事業に至るまで幅広く展開し、素材から部品、デバイス、完成品さらにはサービスまで展開する、世界でも例を見ない企業に成長している。
このようにして稲盛氏は、京セラを多種多様の事業を持つ、日本でも有数の企業グループにまで短期間に育て上げたことから、その経営手腕が高く評価され、同氏は戦後ベンチャー経営者の旗手と評されている。
しかし、同氏が手がけたビジネスは、京セラに留まらない。
1984年には、日本の電気通信事業の自由化に呼応して、株式会社DDI(現KDDI株式会社)を設立した。その目的は「長距離電話の低料金化を実現し、国民の便に資する」というものであったが、その趣旨が社会に広く受け入れられ、同社は新電電3社のなかで常にトップの業績を続けた。さらに1987年には、セルラー電話会社を全国に設立し、移動体通信事業(現在のau)に進出した。
また、2000年10月には、このDDIと、日本最大の国際電信電話会社KDD、首都圏の有力通信事業者IDOとの合併を図り、新生KDDI株式会社を誕生させた。2001年6月には、同社最高顧問に就任している。
稲盛和夫氏の活躍の舞台は、ビジネスのみならず社会貢献の分野にまで広がりを見せている。
1984年には、私財を投じて稲盛財団を設立し、国際賞「京都賞」を創設した。毎年11月10日には、京都において授賞式を開催し、「先端技術」「基礎科学」「思想・芸術」の3部門で、人類・社会の進歩発展に顕著な功績のあった方々を顕彰している。
また、若手経営者の育成にも力を注ぐ。現在ボランティアで、57カ所(内海外5カ所)、3600人余の若手経営者が集まる、経営塾『盛和塾』塾長として、後進の育成に尽力している。
著書に、『心を高める、経営を伸ばす』(89年PHP研究所)、『新しい日本、新しい経営』(94年TBSブリタニカ)、『A PASSION FOR SUCCESS』(95年米国マグロウヒル社)、『哲学への回帰』(95年PHP研究所、梅原猛氏との共著)、『成功への情熱』(96年PHP研究所)、『FOR PEOPLE AND FOR PROFIT』(97年講談社インターナショナル)、『敬天愛人』(97年PHP研究所)、『日本への直言』(98年PHP研究所)、『人生と経営』(98年致知出版社)、『稲盛和夫の実学』(98年日本経済新聞社)、『稲盛和夫の哲学』(01年PHP研究所)、『ガキの自叙伝』(02年日本経済新聞社)、『徳と正義』(02年PHP研究所)、『新しい哲学を語る』(03年PHP研究所)、『君の思いは必ず実現する』(04年財界研究所)、『生き方』(04年サンマーク出版)がある。 これらの書籍のうち多くが、英語をはじめ独語、ルーマニア語、中国語、ハングル、タイ語等各国語に翻訳され、世界各地で出版されている。

授賞理由

稲盛和夫氏は、苦学の後、昭和30年に京都の碍子会社に就職し、新素材セラミックス材料の開発に従事し新しい発想のもとに成功を収めた。その人柄と、仕事への情熱に感銘した同志が氏の下に集まり、やがて人々の支援を得て新会社(現京セラ株式会社)が設立された。同社が、同氏の弛まぬ努力と強い信念の下、ファインセラミックスを通じてエレクトロニクス産業の発展に大きく貢献したことは周知のことである。「だれにも負けない努力をする」「謙虚にして驕らず」「反省ある日々を送る」「生きていることに感謝する」「善行、利他行を積む」「感性的な悩みをしない」などの同氏の信念(フィロソフィ)は、その下で培われた企業組織(京セラ)をして世界のトップメーカーへと急成長させると共に、その後の同社の事業多角化の飛躍的成功への精神的支柱となっているものと考えられる。
そして、同氏の事業は通信分野へと及び、今日の我が国の情報社会を支える重要な役割を担っている。これらの事業の成功は、一企業グループの発展を越え、広く我が国国民の便益に寄与すると共に、科学技術の世界への平和貢献の有り様を示している。同時に、その起業家精神は次世代ベンチャー経営者の旗手として我が国をはじめ内外の多くの若者の尊敬を得ている。この他、各種の公職を通じても、同氏の社会的貢献は、深く、広い。
昭和59年に同氏の創設した国際賞「京都賞」は、「先端技術」「基礎科学」「思想・芸術」の3部門で、世界の中から人類・社会の進歩発展に顕著な功績のある方々を顕彰している。その選考基準は学術的・国際的評価のみならず、候補者のその人柄に重きをなすといわれており、ここに同氏の「人格の正しさ」を重視する国際平和への理念が反映されている。歴史都市・京都から発信するこの「京都賞」は、グローバル化しかつ多様化した国際社会の中にあって、一つの光を示している。「人間として正しい」倫理観や道徳観に根ざした氏の国際貢献は、古代ギリシャの学園「アカデミア」の創設の理念『魂の目を向けかえること』と、まさに軌を一とするものである。
このように、同氏の企業活動を基礎にした社会貢献と、その人生哲学の下での謙虚な姿勢「生き方」に連なる国際貢献のあり方は、我が国のみならず広く世界の人々へ「ゆるぎなき指針」を示している。


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