受賞年月
平成31年2月
受賞理由
地球環境問題の解決に向け、その高い先見性、卓越した実践性をもって、「ガイア理論」の普及とその目指す世界の実現に寄与した数々の功績。
受賞者の経歴
【主な職業】
NPO 法人ガイア・イニシアティブ代表
リゾートトラスト株式会社 取締役(社外取締役)
〈現在の社会・委員会活動等〉
1987年 4月~ 中京女子大学客員教授(コミュニケーション論)
2002年 6月~ NPO法人 金融知力普及協会理事
2005年 7 月~ 公益財団法人日本生産性本部 日本経営品質賞委員会 委員
2009年11月~ NPO法人 PONT GREEN推進環境会議理事
2013年 6 月~ East-West Cneter(ハワイ大学)客員研究員
2013年 9 月~ 沖縄県久米島町観光大使
2015年 7 月~ ”Club of Rome”(ローマクラブ)正会員
2015年10月~ 「科学技術イノベーション政策研究の方向性に関する有識者懇談会」文部科学省委員
2017年11月~ ”Club of Rome”(ローマクラブ)エグゼクティブ・コミティメンバー
2018年10月~ 中部大学 客員教授
【学 歴】
1977年 3月 上智大学文学部新聞学科卒業
1994年 3月 上智大学大学院文学研究科博士前期課程修了(留学・休学を経て修了)
【学位・称号】
上智大学文学修士
【経 歴】
1977年 7月 米国ミズーリ・コロンビア大学大学院留学(フォトジャーナリズム専攻)。
帰国後、フリージャーナリストとして活動。マガジンハウス出版『クロワッサン』、『エル・ジャポン』『ブルータス』等の雑誌にて写真や執筆を担当。1979年日本放送協会(NHK)『600こちら情報部』、『海外ウィークリー』、『スポーツとニュース』、『サンデースポーツスペシャル』等の番組キャスターの他、1981年英国ロイヤルウェディング、1986年アジア大会(ソウル)、1988年ソウルオリンピック、1999年3月米国アカデミー賞授賞式等の現地メインキャスターを務める。
1992年 テレビ東京系列『ワールド・ビジネスサテライト』メインキャスター(~1996年9月)
1999年 5月 国連本部にて行われたシンポジウム“World Press Freedom Day”に日本代表のジャーナリストとして参加
2001年 4月 日興フィナンシャル・インテリジェンス株式会社理事長(~2005年3月)
2002年 3月 アサヒビール株式会社 取締役(~2007年3月)
2002年 6月 三洋電機株式会社 取締役
2004年 6月 株式会社ニッポン放送 取締役(~2005年3月)
2005年 6月 三洋電機株式会社 代表取締役会長(~2007年3月)
2008年 8月 NPO法人ガイア・イニシアティブ代表(~現任に至る)
2017年 6月 リゾートトラフト株式会社 取締役(~現任に至る)
〈歴任した主な社会・委員会活動等〉
(政府関係)財政制度審議会委員、中央教育審議会委員、科学技術・学術審議会委員、科学技術庁顧問、総合科学技術会議・BT研究開発プロジェクトチーム、内閣構造改革特別区域推進本部評価委員会教育部会委員長、法制審議会委員、経済産業省中小企業政策審議会委員、関税等不服審査会委員、沖縄振興審議会委員、国土交通省北海道田園委員会委員、交通安全生涯学習検討委員会委員、建設省道路審議会委員、運輸省観光政策審議会委員、労働省ゆとりのある休暇推進協議会委員、東京湾の将来を考える懇談会、民間放送連盟放送番組調査会委員、公正取引委員会独占禁止懇話会 他多数
(民間企業 顧問 / 経営アドバイザー)住友商事、三井不動産、日本ユニシス、NTTドコモ、日興コーディアル証券 他の顧問・経営アドバイザー等
(各種団体)産業技術総合研究所運営諮問委員、宇宙航空研究開発機構(JAXA)理事、日本経団連理事、日本体育協会理事、東京国際交流財団理事、シップ・アンド・オーシャン財団理事、海洋開発研究機構経営諮問医院、ドナルド・マクドナルド・ハウス・ジャパン・デン・フジタ財団理事、スペシャル・オリンピックス日本顧問、日本学術振興会21世紀COEプログラム委員会委員、公共広告機構理事 他
【過去における表彰】
2001年 経済界大賞 フラワー賞
【主要著書】
≪著書≫
『手ごたえのある女の人生が始まる本』(三笠書房)2005年
『心をつなぐ生き方』(サンマーク出版)2004年
『ガンバレ、自分!』(三笠書房)1996年
『私たち「地球人」』(集英社)1992年
≪訳書≫
『したたかな女でいいじゃない!』(K.ホワイト/PHP)2001年
『グリム童話の正しい読み方』(R.ブライ/集英社)1999年
『あなたにめぐり逢うまで』(D.ドラッカー著/清流出版)1997年
『アイアン・ジョンの魂(こころ)』(R.ブライ著/集英社)1996年
『チェンジング』(リブ・ウルマン/徳間書店)1990年
受賞者の業績
氏の業績は、以下のとおりである。
1979年日本放送協会(NHK)のキャスターとして仕事を始めた氏は、日本社会のさまざまな分野の前線で問題の深層への認識を深めるとともに、世界のひのき舞台での取材やキャスター活動を通じて、地球規模での問題の捉え方と、問題の解決には地域に根ざした取組みの必要性への認識を深めた。ジャーナリストとしての活動のほか、複数の企業の取締役などに就任し経営に参画するとともに、政府関係機関の委員を数多く歴任するなど、政財界の中枢で活躍し、その中で経済のありよう、何のための経済成長なのかを考え続け、2007年前後にこれからの自身の生き方と地球の未来を「ガイア理論」に委ね、お金や物に代わるガイア軸(G軸)の大切さを提案することとなった。
「ガイア理論」は、1970年代にイギリスのジェームズ・ラブロックが提唱した「大地・水・空気・生き物などを含めた自己調節機能を備えた巨大な生命体としての地球論」であり、ヒトもその中の一構成員として地球上の生物とともに生きる道を明示したものである。
氏は、このような経緯を経て、ガイア理論の目指す世界を実現するために、2008年にNPO法人ガイア・イニシアティブを設立し、ガイア理論の普及と組織体制の強化に務めている。
ガイア・イニシアティブは、未来世代のいのちや幸せを第一に(それは今を生きる世代の幸せや生きがいそのものでもある)、地域に根を下ろした活動を地球的視野で実践している。現在、ひとりひとりが日常生活の中でも、地球のためになにか一つできることをしようという「+1(プラス・ワン)運動」を提唱し、以下の三つの活動を基幹プロジェクトとして位置付け、2011年の東日本大震災以後継続して進められている。
1)世界と日本をつなぐプロジェクト(ソーラーランタンプロジェクト)
世界に13億人もいるといわれる電気のない暮らしをソーラーランタンで明るくしようとの取組み。元IPCC議長 Dr. Pachauri氏率いるTERI研究所と共にインドでスタート。
2)周囲の山村と都市をつなぐプロジェクト(+1の森プロジェクト)
荒廃が進むわが国の森林の手入れを、都市の元気な若者や企業をつなぐことで共に支えていく取組み。
3)被災地と非被災地をつなぐプロジェクト(+1ANIMO Project)
2011年の東日本大震災後、被災地の子供達の学習サポートやカラダづくりを通じて元気にする様々な取組み
これらの基幹的プロジェクトを地域密着型の取組みに結びつけ、近い将来消滅が危惧される地方の創生に取り組み、長野県木曽郡王滝村をモデルに住民とともにする森づくり計画に参画。特に沖縄県久米島では、世界に開かれた自立できる「地球の村」を目指した未来志向の町作りに大きく貢献している。2012年、ガイア・イニシアティブは久米島町とパートナーシップ協定を結び、氏は2013年から久米島観光大使や久米島まちづくり特別顧問として、「いのち輝く島プロジェクト」の中心として重要な役割を果たしている。久米島は世界初の海洋温度差発電プラントを持ち、「島留学」コンセプトのもと、ハワイ島との高校生交換留学をサポートするなど町の将来に不可欠なグローバル人材の育成に力を注いでいる。真のグローバル人材とは、「“いのち”にとって必要不可欠な水・食料・エネルギーを守る豊かな知恵と技術をもち、それを次世代につないでいける人材」とし、再生可能エネルギー自給100%と食料自給率100%を掲げたいのち輝く学びの場作りは、氏のメデイア・コミュニケーション界、教育・学術界、政財界等の分野で培った多様な経験と類まれな英知が大きな基盤となっている。
今、進むべき道を見失いつつある世界と日本において、確かな未来にとって必須の古来の伝統知と最先端の技術を結びつける「伝統回帰」を実践する取組みは画期的なものであり、世界が注目し始めている。
お金と物に溢れ効率性/即効性を求め続けた20世紀の物質文明は、2011年に発生した未曾有の東日本大震災によって、その破綻が白日の下に晒され、とりわけ、福島第一原子力発電所の崩壊は、いのちとその拠り所となるふるさとのかけがえのない大切さを世界に知らしめた。しかし、混迷を深めるばかりの世界は、今なお市場原理主義経済の呪縛から逃れられず、「ヒト」という生物種は最高度に進化した生き物と自認しながら、自らを破滅させる物質文明を自己制御できず、未来世代の生きる権利をも奪いかねない身勝手な生き物になりつつあるといって過言ではない。
このような一見“絶望”的な世界を本来の方向に転換させるには、“原点”に立ち返り、地球・社会・人間それぞれの内部ならびに相互間の多様なつながりが分断され続けてきた現状を「つなぐ・つなげる・つながる」世界に戻す取組みを、点から線へ、線から面へと広げていくことが本道で、それには、未来世代からも賛同され得る確かな理論や哲学を必要とし、同時にそれへの共感を確実なものにする実践が不可欠である。まさに、この車の両輪を備えた取組みを進めているのが、氏が創設し牽引し続けているガイア・イニシアティブである。
環境省は2014年に本腰を上げて「つなげよう、支えよう森里川海」プロジェクトを立ち上げ、2050年を目標に物質文明に代わる全ての命に根ざした「環境・生命文明」社会を創生すべく、国民運動的に展開し始め、その戦略や戦術は2018年4月に閣議決定された「第5次環境基本計画」にも明示された。このような国としてのトップダウン的展開の成否を左右するボトムアップ的展開を、お金や物に代わる「G軸」(ガイア軸)のもとに、誰もが参加できるプラットフォーム作りを先行的に推進してきたガイア・イニシアティブを牽引する氏の活動は、今を生きる私たちに大いなる希望と勇気を与えるだけでなく、未来世代からも高く評価されるものである。