絹川 正吉氏【国際基督教大学名誉教授】 文化部門

 

受賞年月

令和3年3月

受賞理由

氏の長年に亘る我が国の大学教育の改革、とりわけリベラルアーツ教育の充実・発展のために指導的役割を果たした数々の功績

受賞者の経歴

【現在の主な職業】
 国際基督教大学名誉教授、一般社団法人大学教育学会顧問

【学  歴】
1953(昭和28)年3月 東京都立大学理学部数学科卒業
1955(昭和30)年3月 東京都立大学大学院理学研究科数学専攻修士課程修了
1960(昭和35)年6月 Northwestern University、Graduate School 終業

【学位・称号】
 Ph.D.(Doctor of Philosophy) 

【経  歴】
1955(昭和30)年4月 国際基督教大学助手
1958(昭和33)年4月 国際基督教大学講師
1961(昭和36)年4月 国際基督教大学助教授
1972(昭和47)年4月 国際基督教大学教授
1987(昭和62)年4月 国際基督教大学教養学部長(~ 1991年3月)
1996(平成  8)年4月 国際基督教大学学長(~ 2004年3月)
2004(平成16)年6月 国際基督教大学名誉教授
2008(平成20)年6月 国立大学法人新潟大学理事(~ 2014年1月)

【役職】
1996(平成  8)年5月 日本私立大学連盟理事(〜 2001年12月)
1997(平成  9)年5月 日本高等教育学会理事(〜 1999年4月)
1997(平成  9)年5月 大学基準協会監事(〜 1998年4月)
1998(平成11)年5月 大学基準協会理事(〜 2003年4月)
1998(平成10)年4月 大学評価・学位授与機構専門(教養)委員 (~ 2000年3月)
2000(平成12)年4月 東京学芸大学大学運営諮問会議会長(〜 2004年3月)
2000(平成12)年6月 大学教育学会会長(〜 2003年6月)
2001(平成13)年6月 大学セミナーハウス館長(〜 2003年3月)
2001(平成13)年9月 IDE大学(民主)教育協会理事(〜 2012年7月)
2002(平成14)年1月 日本私立大学連盟常務理(~ 2004年3月)
2002(平成14)年4月 電気通信大学大学運営諮問会議委員(〜 2004年3月)
2003(平成14)年4月 岩手大学運営諮問会議委員(〜 2004年3月)
2003(平成15)年4月  文部科学省「特色ある大学教育支援プログラム」実施委員会委員長(~ 2008年3月)
2005(平成17)年6月 日本高等教育学会理事(〜 2009年5月)
2008(平成20)年9月 読売新聞社「大学の実力」諮問委員(~ 2018年)
2013(平成25)年6月 一般社団法人大学教育学会監事(~ 2017年6月)
2015(平成27)年6月 大学教育学会名誉会員 

主要著書・論文等

【著書(大学教育関係)】
『一般教育における総合の意味』ICU一般教育シリーズ 12  1982年.
『ヘブライズムとヘレニズム』(共著)新地書房  1985年.
『大学は変わる』大学セミナーハウス編(編著)国際書院 1989年.
『大学教育の本質』ユ−リ−グ 1995年.
『大学教育の思想』東信堂 2006年
『大学教育のエクセレンスとガバナンス』地域科学研究会・高等教育情報センター 2006年
『大学の死、そして復活』東信堂 2015年
『リベラルアーツの源泉を訪ねて』東信堂 2018年

(共編著)
絹川正吉・他『大学力を創る―FDハンドブック』東信堂 1999年
絹川正吉・他『ICUリベラルアーツの全て』東信堂 2002年
絹川正吉・舘昭『学士課程教育の改革』東信堂 2004年
絹川正吉・小笠原正明『特色GPのすべて』大学基準協会 2011年

(論考)
「一般教育における総合の意味―国際基督教大学における経験の立場から―」 『一般教育学会誌』、3-2,1981年
「一般教育の発想」IDE 1983年7月
「大学教員評価の視点」(共著)『一般教育学会誌』1985年
「なぜFaculty Developmentか」IDE 1987年7月
「リベラル・アーツ教育の意味と実践」『大学時報』1989年11月
「学部教育の展望」『大学教育改革の方法に関する研究、広島大学』1990年
「一般教育の授業評価」『大学教育改革の方法に関する研究、広島大学』1990年
「大学の自己評価とファカルティ・ディベロップメント」『大学時報』1990年11月
「大学の危機とは何か」『一般教育学会誌』13-1 1991年
「大学教員の評価」『大学教員研修マニュアル』大学セミナー・ハウス 1991
「学生による教員評価への批判と反論」『一般教育学会誌』1992年11月
「ICUリベラル・アーツ教育の自己評価」『一般教育学会誌』14-2 1992年11月
「学士課程教育」IDE 1992年7月
「大学の自己評価・一般教育の自己評価―国際基督教大学の場合:自己評価の原点は何か」『一般教育学会誌』15-1 1993年6月
「学生の授業評価とシラバス」『一般教育学会誌』1994年11月
「カリキュラム開発の視点」『大学時報』1995年3月
「シラバス」IDE 1995年4月
「Faculty Developmentの研究」『一般教育学会誌』1995年5月
「大学教員評価システム」『大学教育学会誌』1999年11月
「GPA制度と厳格な成績評価」『一般教育学会誌』1997年5月
「現代の教養教育論」『大学論集、広島大学』28集 1998年
「一般教育学会から大学教育学会へ」『大学時報』1998年1月
「「21世紀の大学像」の構図」IDE 1999年1月
「大学教員評価システム」『一般教育学会誌』21-2 1999年
「一般教育の終焉と展開」IDE 1999年11月
「大学教員任期制と教員の流動化」 広島大学『高等教育研究叢書』56 1999年
「ITの非物質性を超克する」『別冊・環-大学革命』藤原書店 20001年3月
「グローバル化時代の教養教育」『一般教育学会誌』2001年5月
「教養教育の評価:第三者評価機関と私立大学の立場」『一般教育学会誌』23-2、2001年5月
「私立大学の組織・経営再考」」『高等教育研究』5集27-52 2002年
「大学教育の品質保持管理~単位制とGPA~」地域科学研究会・高等教育情報センター『高等教育シリーズ』25 2003年
「ミニマム・リクワイアメントの本質」IDE 2003年5月
「大学基準の日米比較」『大学評価研究』3 2003年6月
「私立大学のグランドデザイン」IDE  2004年1月
「教養教育論の視点」『学士課程教育の改革』東信堂 2004年
「学部教育改革とGP」IDE 2004年6月
「これからの教養教育」『大学時報』2004年7月
「教養教育・大学教育の新たな創造をめざして―大学教育学会25年の歩みから展望する―」『大学教育学会誌』26-1 2004年6月
「優れた大学教育とは」『大学教育学会誌』26-2 2004年11月
「私立立大学のガバナンス‐国際基督教大学の経験から」『カレッジ・マネジメント』125 2004年
「一般教育学会におけるFDの展開」『あたらしい教養教育をめざして』東信堂 2004年12月
「リベラルアーツ教育と学士学位プログラム」『高等教育研究』8集 日本高等教育学会、2005年
「名誉制度」IDE 2005年5月
「(書評)土持ゲーリー法一『戦後日本の高等教育政策』」IDE 2006年6月
「静けさを失しなった大学」IDE 2006年11月
「研究大学における教養教育」『名古屋大学高等教育研究』6号171-194 名古屋大学 2006年
「初年次・キャリア教育と学士課程」『大学教育学会誌』28 2006年
「学士課程教育における初年次教育」『カレッジ・マネジメント』145 2007年
「『「大学の死」、そして復活』に対する書評への応答」『大学評価研究』6 2008年3月
「大学教育の実質化のためのFD」 『大学評価研究』7 2008
「学士課程教育と教養教育」IDE 2008年11月
「学士課程教育と大学間連携」IDE 2009年2月
「(書評)井下千以子『大学における書く力』」『大学教育学会誌』31 2009年5月
「教育者としての大学教員」『大学教育学会誌』31 2009年12月
「GPの光と影」IDE 2009年12月
「一般教育学会におけるFD研究の展開」『大学教育研究と改革の30年』東信堂 2010年
「大学の情報公開について思うこと」IDE 2010年7月
「学びの転換」『大学における〈学びの転換〉と学士課程教育の将来』東北大学高等教育開発推進センター 2010
「教養教育と一般教育」IDE 2011年1月
「教養とリベラルアーツ」『敬和カレッジ・ブックレット』21 2015
「FDのダイナミックス(1)〈行政的と自立的〉」『大学教育学会誌』29-1 2007年6月
「FDのダイナミックス(2)〈工学的方法と羅生門的対応〉」『大学教育学会誌』30-1 2008年
「FDのダイナミックス(3)〈FDの今後の課題―ダイナミックス研究からの提言〉」『大学教育学会誌』31-1 2009年
「教育の質を保証する役割を教授会に果たさせることが学長の責務」『Between』8-9 2013年
「(書評)『(日本高等教育学会編)スタッフ・ディベロップメント』」『大学職員論叢』1 2013年3月
「教養」という大学の課題」『大学評価研究』20015年3月
「重層的FDのフレームワークとFD推進者の役割について」『大学教育学会誌』37-1 2015年6月
「断想・一般教育学会・大学教育学会40年」『大学教育学会40年誌』2020年

(数学著書)
『初等フーリエ解析と境界値問題』森北出版 1972年
『リース・ナジ― 関数解析』(共訳)共立出版 1973年
『フーリエ解析例題演習』森北出版 1976年
『解析要論』理工学社 1979年
“A Current of Mathematical Thinking” 「国際基督教大学一般教育シリーズ」 1984 年

【主要研究論文(数学関係)(数学論文総数35編)】
1)Contractions of Fourier coefficients and Fourier integrals, Journal D’Analyse Mathematique, VIII, 377-406, 1960
2)Transformations of conjugate functions, Tohoku Math. Journal, 13, 1961
3)On the spectral synthesis of bounded functions, Proceedings of American Math. Society, 14, 1963
4)Some generalizations of contraction theorems for Fourier series, Pacific Journal of Mathematics, 109, 1983
5)Integrability of Walsh series, Acta Mathmatica Academiae Scientiarium Hungaricae, 46,1985
6)On the absolute convergence of Fourier series,Periodica Mathmatic Hungrica,25,1992
7)Uniform extensions and spectral synthesis of bounded functions,Chinese Journal of Mathematics, 1992

【講演記録】
・北星学園 1999.8.12「大学・学校の個性化とFD」
・鹿児島大学 2001「大学を変えるFD」
・私立大学連盟 2002.7「私立大学教員の今日的課題」
・東海大学 2003.1.8「大学改革の逆説」
・跡見女子大学 2003.3.3「授業評価を活かす」
・コンソーシアム京都 2003.3.8「私が考える日本の大学教養教育」
・金沢大学FD研究集会 2003.3.15「大学教育におけるFD活動」
・中部大学 2003.6.1「大学教育の品質保持管理~単位制とGPA」
・鳴門教育大学 2003.9.3「教養教育」
・大学関西フォーラム(大阪読売新聞主催)2003.12.5「教育力を問う」
・九州大学 2003.12.19「新しい大学文化と大学教員のあり方」
・京都繊維工芸大学2004.1,19 「FDの思想と実践」
・滝高等学校PTA  2004.4.21「これからの中学・高校生に求められるもの」
・第52回中国・四国地区大学教養教育研究会於島根大学 2004.5.29「大学教育の現代的課題:本質を捉える『知力』をどう育てるか」
・私学研修福祉会・私大連盟ワークショップ2004.7.28「評価の時代における私大教員のあり方」
・西南学院大学夏季教員懇談協議会「大学教員の教育業績評価への取り組み~ICUと私大連の場合を中心に」
・九州大学全学FD  2004.9.22「GPA制度の活用~ICUの経験」
・広島女学院大学 2004.9.23「21世紀における教養教育」
・東京農工大・大学教育センター 2004.10.8「大学の営みとしての教養」
・私大協・教務担当課長研修会 2004.10.13「私立大学のデザイン」
・防衛大学校 2004.10.28「学士課程教育の展望」
・私大連「私立大学フォーラム」2004.11.6「特色GPの意味と大学教育」
・名古屋大学 2005.9.26「教養教育の目指すべき方向」
・名古屋大学 2005.9.29「研究大学における教養教育の創造」
・東洋大学 2005.10.6「教育評価とFD」
・宮崎大学 2005.12「今大学に求められる真の学士課程教育とは?」
・明治大学 2005.2.2「優れた大学教育とは~特色GPの経験から
・大学コンソーシアム京都 2005.1.29「キャリア教育における教養教育の意義と展望」
・京都コンソーシアム 2005.10.22「大学経営論」
・千葉大学 2005.11.29「〈普遍教育〉コメント」
・宮崎大学 2005.12.2「いま大学に求められる「学士課程」教育」
・東洋大学経済学部 2005.10.6「教育評価とFD」
・大学コンソ-シアム京都 2006.7.15「FDネットワークの展開と大学教育改革の方向性を問う」
・大学コンソ-シアム京都 2006.7.15「大学教育改革のための大学経営論~理事会と教授会の相貫」
・東京家政大学 2006.9.15「学生サービスの充実・向上とFD活動」
・名古屋大学 2006.「研究大学における教養教育」
・明治学院大学 2006.6.20「これからの大学評価とは」
・武蔵野大学 2006.1.24「教養教育と大学改革」
・桜美林大学 2006.3.14「リベラルアーツにおける大学院教育の展望」
・桜美林大学 2006.3.14「リベラルアーツカレッジで働く」
・二松学舎 2006.3.16「大学教育のエクセレンス」
・玉川大学 2006.4.1「大学教育と学生の質の保証」
・芝浦工業大学 2006.4.6「これからの大学―教養と専門と」
・明治学院大学 2006.6 .20「これからの大学評価とは」
・信州大学 20067.17「これからの学士課程~教養と専門と」
・京都コンソーシアム 2006.7.15「アドミニストレータ―研修」
・華頂短大 2006.9.9「学士課程(教養)教育の課題「」
・東京家政大学 2006.9.15「教育内容・学生サービスの充実・向上とFD活動」
・山梨大学 2006.10.25「大学教育の今日的課題」
・大学コンソーシアム京都 2006.10.15「大学マネジメントにおける教職協同と職員の育成」
・GP合同フォーラム 2006.11,12「特色GPの意義・実績と今後の展望」
・同志社大学 2007.2.27「教育評価としての学生調査」
・同志社大学 2007.12.8「大学コミュニティの創造~学生参画における学生の成長と発達」
・千葉大学 2007.3.5「普遍教育コメント」
・大学コンソーシアムひょうご 2007.3.22「これからの学士課程教育と競争的GPの行方」
・大手前大学 2007.3.23「大学教育のエクセレンス~リベラルアーツ教育を考える」
・恵泉女学院大学 2007.6.7「初年次教育と学士課程」
・大学行政管理学会 2007.6.23「これからの大学職員に期待されること」
・コンソーシアム京都 2007.6.30「大学教育改革のための経営論~スタッフ機能と大学教育の質保証~教授会と理事会の相貫」
・日本私立大学協会 2007.7.10「学士課程教育の思想とその設計」
・リクルート 2007.7「教養とは」
・私情協「大学教育・情報戦略大会」2007.9.4「FD実現のための大学の課題」
・広島経済大学教職員セミナー 2007.9.14「大学教育の現代的課題~初年次教育を中心として」
・聖和大学 2007.9.18「大学教授職の使命」
・追手門大学 2007.9.19「大学教員評価」
・名城大学 2007.11.30「学士課程教育の再構築」
・一ツ橋大学 2007.12.14「GP制度の活用=ICUの経験」
・九州大学 2007.12.17「学士課程教育の再考」
・一ツ橋大学 2008.1.5「学士課程ステムの構築」
・九州保健福祉大学 2008.2.14「大学教育の課題」
・京都大学 2008.3.26「相互研修型FDについて」
・コンソーシアム 2008.5.11「SDとFD:越境するSD」
・首都大学東京 2008.5.29「共通教育の必要性」
・大阪府立大学 2008.7.4「学士課程教育の理念とその実現」
・京都大学 2008.7.7「大学教育の今日的課題」
・新潟医療福祉大学 2008.9.2「ユニバーサル・アクセス時代の大学教育改革」
・新潟大学歯学部 2008.10.9「GP事業から見た高等教育の将来像」
・名古屋外国語大学 2008.11.29「学士課程の再構築とは何か」
・私立大学協会・教育学術充実協議会 2008.12.2「拡大する教員の役割とFD」
・東京家政学院大学 2009.2.19「学生サービスの充実・向上とFD活動」
・新潟大学 2009.5.2「大学における基本的教育力の基準枠組みという発想」
・私学研修福祉会(短大の部)2009.11.4「教養教育とは」
・竜谷大学 2009.12.1「学士課程の体系化と教育の質保証」
・阪南大学 2009.12.4「これからの大学教育と実質的FDの進め方」
・有明教育芸術大学 2010.1.13「FDについて」
・高等学校進学指導連絡協議会 2010.3.26「高等教育は今~高等学校に求められること」
・関西学院大学 2010.5.15「高等教育の意義と解決すべき問題点」
・大学行政管理学会・関東地域研修 2010.7.31「大学教育の質保証」
・京都大学 2010.9.6「FDネットワークの展開と大学教育改革の方向性を問う」
・京都大学 2010.9.7「相互研修型FD・基調講演への応答」
・山形県立医療保健大学 2010.10.19「大学教育のエクセレンスとガバナンス」
・社会医療技術学院 2011.5.15「教員指導者の役割」
・熊本学園 2011.10.26「変貌する大学教育~学士課程の本質」
・新潟工科大学 2012.2.15「変貌する大学教育~学生主体型の授業をめぐって~」
・山形大学 2013.9.3「教養教育を問う
・新潟国際情報大学 2013.11.27「大学教育の展望~学士課程教育とリベラルアーツ教育」
・敬和学園大学 2014.4.8「教養とリベラルアーツ」
・新潟大学 2014.12.8「教育改革フォーラム〈学位プログラムの展開と学習成果の質保証強化〉」
・矢谷教育フォーラム 2018.4.1

業  績 : 

氏の主な業績は、以下のとおりである。

氏の業績の核心は、日本の大学における教育改革に先鞭をつけ、1980年以来、長年にわたって大学教育改革運動を主導してきたことである。その活動の空間は、在職していた国際キリスト教大学であり、一般教育学会(大学教育学会)であり、大学基準協会、日本私立大学連盟、そして、日本の各地の大学であった(講演記録参照)。

かつての大学教員のエトスは研究第一であり、教育活動は二次的な営みと受け止める風潮が強かった。 氏はこの風潮に対抗して、大学の営みを学生中心にすることを強く主導した。今日、このような考え方は、当然のこととする機運が生じているが、絹川氏はそのような思想の先駆者であった。
さらに、学生中心の教育の実施には、大学教員の資質開発が必須との認識に立ち、同僚の原一雄氏と共同で、FD(Faculty Development、大学教員資質開発)を、一般教育学会で提唱し、学会の研究課題に取り上げられ、さらに大学審議会に影響を及ぼして今日に至っている。

以上のような思想の基盤を、氏は一般教育、リベラルアーツ教育の研究によって築かれた。

氏の大学教育改革運動を顕在化させたことの一つは、文部科学省事業「特色ある大学教育支援プログラム(特色GP)」を,実施委員長として主導したことである。この事業は、日本の大学改革を起動した、といわれている。日本の大学がこぞって、それぞれの大学の教育活動を見直し、優れた教育プログラムを開発することに熱中したのである。この事業そのものは、最終的には実施委員長を務めた氏の見識に総合されていた、と評価された。

 

 

 

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