私と一冊の本  朱妍

子供の頃は、考えが単純すぎたせいか、この世の中のすべてはよいものでなければ悪いものに決まっていると、私はずっと思っていました。例えば、人を殺した人は必ず悪人で、お母さんの話をよく聞く、成績のよい子は絶対に立派な人だと思い込んでいました。このように、私は簡単に人間を二分化してしまっていたのです。しかし、「紅楼夢」という小説を読んで、やっと人は誰でも優れているところがあることがわかりました。

例えば、私は長い間ずっとクラスメートの張君という男の子があまり好きではありませんでした。彼は体が大きくて乱暴な男の子で、よくほかの人と喧嘩したり、体の弱い人をいじめたりして、また宿題も全然しませんでした。そして何より、彼は成績が悪くて、いつも教室の後ろで一人座っていました。ある日、彼がうっかりして、私にぶつかって、私は転んでしまいました。私は血がいっぱい流れ、その傷跡は今でも残っています。そのとき、私は彼への恨みは一生消えることがないだろうと思いました。
しかしある日、母が「紅楼夢」という分厚い本を買ってきてくれました。そのとき、私はもう中学2年生で、本をたくさん読んでいましたが、最初はやはり理解できませんでした。読むのをやめようと思いましたが、母に薦められて読んでいくと、読めば読むほど面白く思えてきました。本には賈宝玉という男性が出てきます。彼は家柄がよく、お金持ちなので、彼と結婚しようと考えている女性がいました。薛宝釵です。全部読んでから私は母にこう言いました。
「ね、お母さん、わたし薛宝釵のこと大嫌いなの!彼女は賈宝玉は林黛玉のことを好きだと知ってるくせに、何で邪魔するの?」
本の中に、林黛玉という女性も出てきます。賈宝玉はこの林黛玉のことが好きでした。だから薛宝釵は二人の仲を邪魔しようとするのです。
「でも、わたしは薛宝釵は悪くないと思うよ。」と母は言って笑いました。
ええ、彼女は悪くないの?わたしは困りました。
「彼女は親切なふりをしてみんなと仲良くしてるのに、ほかの人の幸せを奪おうとするなんて、悪い人なんじゃないの?そうでしょう?」と私が聞くと、母はこういいました。
「あのね、彼女の心は悪くないのよ、だから、わざと邪魔するつもりはないのよ!ひどい世の中を生きていくためにやらなきゃいけないことがたくさんあるんだから。」
そうなのか。生きていくためにやるしかないのかな。私の嫌いな薛宝釵は賈宝玉と結婚しましたが、彼に嫌われてしまいました。でも 賈 宝玉と一緒にいたい彼女は精一杯彼に仕えました。彼女にはそんな一面もあったのです。たとえ輝いた人生でなくても、勇気を持って前に進んでいくことこそ大切。痛みや責任から逃れるために自ら自分の命を絶つ人より、愛されていない悲しみの中、頑張る彼女のほうがずっと芯の強い人間だ。人は誰にでも優れているところがあるのではないかと、私は薛宝釵の強さを考えることで分かったような気がしました。

それから、わたしは立場を変えて人を見ることができるようになりました。張君は相変わらず体が大きくて乱暴で、ほかの人と喧嘩ばかりしていました。宿題もやらず、成績も悪くて、いつも教室の後ろで一人座っていました。しかしある日、私が学校で体調が悪くなって吐いてしまい、みんなからいやだ、気持ち悪いと嫌がられたとき、彼だけが助けてくれました。そのとき、彼は何も言わずに私が吐いたものをさっさと片付けてくれました。私はすごく感動しました。それに、彼は大きな体をしながら、毎朝自分の朝食を小鳥に食べさせていました。この姿は不思議と可愛いなと思いました。この世界にはこんなにいい人がいるということにはじめて気がつきました。この発見はとてもうれしかったです。

本からはほんとうにたくさんのことを学習できます。人間に対する見方もそのひとつです。私は母が買ってきてくれたあの「紅楼夢」をずっと大切にしています。この本のおかげで私は張君のような人を別の角度から見ることができるようになり、また、世界が美しいものだと感じられるようになったのです。

私と一冊の本  朱妍
子供の頃は、考えが単純すぎたせいか、この世の中のすべてはよいものでなければ悪いものに決まっていると、私はずっと思っていました。例えば、人を殺した人は必ず悪人で、お母さんの話をよく聞く、成績のよい子は絶対に立派な人だと思い込んでいました。このように、私は簡単に人間を二分化してしまっていたのです。しかし、「紅楼夢」という小説を読んで、やっと人は誰でも優れているところがあることがわかりました。 

例えば、私は長い間ずっとクラスメートの張君という男の子があまり好きではありませんでした。彼は体が大きくて乱暴な男の子で、よくほかの人と喧嘩したり、体の弱い人をいじめたりして、また宿題も全然しませんでした。そして何より、彼は成績が悪くて、いつも教室の後ろで一人座っていました。ある日、彼がうっかりして、私にぶつかって、私は転んでしまいました。私は血がいっぱい流れ、その傷跡は今でも残っています。そのとき、私は彼への恨みは一生消えることがないだろうと思いました。
しかしある日、母が「紅楼夢」という分厚い本を買ってきてくれました。そのとき、私はもう中学2年生で、本をたくさん読んでいましたが、最初はやはり理解できませんでした。読むのをやめようと思いましたが、母に薦められて読んでいくと、読めば読むほど面白く思えてきました。本には賈宝玉という男性が出てきます。彼は家柄がよく、お金持ちなので、彼と結婚しようと考えている女性がいました。薛宝釵です。全部読んでから私は母にこう言いました。
「ね、お母さん、わたし薛宝釵のこと大嫌いなの!彼女は賈宝玉は林黛玉のことを好きだと知ってるくせに、何で邪魔するの?」
本の中に、林黛玉という女性も出てきます。賈宝玉はこの林黛玉のことが好きでした。だから薛宝釵は二人の仲を邪魔しようとするのです。
「でも、わたしは薛宝釵は悪くないと思うよ。」と母は言って笑いました。
ええ、彼女は悪くないの?わたしは困りました。
「彼女は親切なふりをしてみんなと仲良くしてるのに、ほかの人の幸せを奪おうとするなんて、悪い人なんじゃないの?そうでしょう?」と私が聞くと、母はこういいました。
「あのね、彼女の心は悪くないのよ、だから、わざと邪魔するつもりはないのよ!ひどい世の中を生きていくためにやらなきゃいけないことがたくさんあるんだから。」
そうなのか。生きていくためにやるしかないのかな。私の嫌いな薛宝釵は賈宝玉と結婚しましたが、彼に嫌われてしまいました。でも 賈 宝玉と一緒にいたい彼女は精一杯彼に仕えました。彼女にはそんな一面もあったのです。たとえ輝いた人生でなくても、勇気を持って前に進んでいくことこそ大切。痛みや責任から逃れるために自ら自分の命を絶つ人より、愛されていない悲しみの中、頑張る彼女のほうがずっと芯の強い人間だ。人は誰にでも優れているところがあるのではないかと、私は薛宝釵の強さを考えることで分かったような気がしました。

それから、わたしは立場を変えて人を見ることができるようになりました。張君は相変わらず体が大きくて乱暴で、ほかの人と喧嘩ばかりしていました。宿題もやらず、成績も悪くて、いつも教室の後ろで一人座っていました。しかしある日、私が学校で体調が悪くなって吐いてしまい、みんなからいやだ、気持ち悪いと嫌がられたとき、彼だけが助けてくれました。そのとき、彼は何も言わずに私が吐いたものをさっさと片付けてくれました。私はすごく感動しました。それに、彼は大きな体をしながら、毎朝自分の朝食を小鳥に食べさせていました。この姿は不思議と可愛いなと思いました。この世界にはこんなにいい人がいるということにはじめて気がつきました。この発見はとてもうれしかったです。

本からはほんとうにたくさんのことを学習できます。人間に対する見方もそのひとつです。私は母が買ってきてくれたあの「紅楼夢」をずっと大切にしています。この本のおかげで私は張君のような人を別の角度から見ることができるようになり、また、世界が美しいものだと感じられるようになったのです。


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