私を変えたできごと 李雪
日常で起こる些細で不可思議な出来事は人の思考と行動に影響を与えていきます。ともすれば、見逃してしまいがちないつもの風景の中で私たちは成長し、変わります。
去年の12月のある夜、私はネットカフェから出て、寮へ帰る途中、露天商の籠に入っているウサギに心が引き付けられ、籠の前に飛んでいきました。雪のような白い毛、ルビーのようにまっ赤な丸い目、ふさふさしたちっちゃなウサギ。私は思わず「可愛い」と呟きました。とても気に入って、何匹も欲しくなりましたが、一匹だけ買うことにしました。私たちの寮がウサギの巣になると困りますから。ウキウキした気分で寮に帰る途中、ウサギに「あなたはいくつ」ソ」「おかあさんはどこにいるの」ソ」「これから、あなたと一緒に生活するのは嬉しいわ。」」などと話かけました。ウサギはぴょんぴょん跳ねたり、ぐるぐる回ったりして、私の質問に答えるような様子をしました。寮のルームメートにウサギを見せるとみんな大声で「可愛い」と言い、七番目の新しいルームメートだから、ウサギに「なな」という名前を付けました。
その頃、私の幸せな生活に反して、私の姉は恋人と別れて落ち込んでいました。私は彼女を励まそうと思い、姉が元気を取り戻すよう、大切に飼っていた「なな」をプレゼントすることにしました。 ある日曜日、「なな」を連れて姉の宿舎に行きました。姉は「なな」を見て、「すごく可愛い!ありがとう。」「なな、これから、私と楽しく暮らそうね。」と喜んでいました。姉が「なな」を撫でている様子を見て、私は安心しました。けれど、晩御飯ごろになり、「なな」は急に元気が無くなってしまいました。私たちはあわてました。「どうしたの?大丈夫?」「しっかりして!なな!」けれど、反応はありません。近くに動物病院がなく、私たちが途方に暮れているうちに、「なな」はあっけなく目の前の籠の中で死んでしまいました。心が裂けるような悲しみ。私たちは「なな」の名前を呼び続けました。涙が止めどもなく次から次へあふれて、ななのちっちゃな体の上に落ちました。
その時、ななの運命が最初から私の手の中にあったということに気付きました。そもそもウサギは、少しの環境変化もストレスになる生き物のようです。私のもとから、急に姉のもとへ移されて、ななはきっと、心の中で抗議していたことでしょう。なのに、私は最初からウサギの習性を知らず、知ろうともせず、ななの健康状態を気に掛けることもありませんでした。私って本当に最低。その結果、私はななの命を奪ってしまったのです。
私には命に対して、心から尊ぶ気持ちが足りませんでした。当たり前のものだと思って、無頓着な態度で扱っていました。でも、今は以前の自分がどれだけ自己主義で、幼かったかが分かりました。我々人間は多くの生き物の生殺与奪の権を握っています。そして、生きとし生けるものはみんなこの世の中でたった一回しか存在していなくて、その命は取り換えがききません。命は露のように消えやすく、はかないものです。そのことを忘れずに、命の尊厳をいつも心においていられる人間でありたいと思います。失ってしまってからでは、取り返しはつきませんから。
ななが死んでから、もう2年になりました。その可愛い様子は今でも、私の脳裏に焼きついています。きっと永遠に忘れられないでしょう。大切なその命を犠牲にして、私にいろいろ教えてくれたなな、私を変えてくれたなな、本当に、本当にありがとう。