私を変えた出来事  施暁ケン

 「もったない」、日本語の授業で初めて、私はこの言葉を耳にしました。中国語で何と訳せばいいだろう。「まだ役にたつものを燃やしてしまうのはもったいない。過剰の冷暖房はもったいない。水のだしっぱなし、信号待ちのエンジンのかけっぱなしはもったいない」、でも、私はこの「もったいない」という言葉の意味がこの時はっきりとはわかりませんでした。
 この夏、私は合唱団の一員として日本に行きました。行く前には、引率の先生から「日本人はお米を大切にしていますから、日本に行ったら皆さんはご飯をちゃんと残らず食べてください。食べ物を大切にしないのはしつけが悪いと思われますよ。」と注意されました。その時、私は「本当にそんなことできるかしら。日本人が本当にそんなことをしているだろうか」と不思議に思いました。日本に着いて、いよいよ私たち合唱団の出演が近付いてきました。あまり時間もなく、私たちは急いでお弁当を食べることになりました。日本料理は目で楽しむといわれているように、私たちが食べるお弁当も確かにそうで、でも、食べてみると、あまり美味しくありませんでした。 ところが、隣の日本人は皆美味しそうに食べて、その上、一粒のご飯も残さない姿をみました。また、別の日のことです。私たちは日本人の奥さんと一緒に昼ご飯の準備をしました。その時テーブルの上に落とした一粒のご飯を、奥さんはとても自然に拾って食べました。それを見て、「もったいない」という日本人の心が少し分かったような気がしました。このことがあって、私は出された料理が多少口に合わなくても必ず全部食べるように心がけています。
 日本から帰って来て、学食で一緒に食べる友達がご飯を残そうとした時には、私は「ちゃんと食べないと駄目よ。」ということにしています。友達はそんなとき決まって「どうして?」と不思議そうな顔をします。私は「もったいないでしょう。日本人はご飯を残らず食べていたわ。日本は先進国で生活も豊かになったのに、もったいないと思っていろいろ節約しているわ。中国は発展途上国で日本人みたいな生活はまだ何だからもっと節約しなきゃ」と言いました。友達はそれを聞いて残ったご飯を全部食べてくれました。
 私は最近この「もったいない」ということに関して、日本人の先生から、こんなエピソードを聞きました。2002年のノーベル化学賞を受賞した田中耕一さんが、捨てるのはもったいないとある薬品を使って実験したらそれがノーベル賞につながったと言うことです。
 そして、この「もったいない」と言う言葉は、「Reduce(ゴミ削減)」、「Reuse(再利用)」、「Recycle(再資源化)」、そしてこの地球のかけがいのない資源に対する「Respect(尊敬)」それを一言で表す言葉として、今や世界の環境問題の分野で一躍クローズアップされています。「もったいない」、この日本語は英語や中国語には訳せない言葉です。「言葉は心のいれもの」と言います。私はこの素晴らしい言葉「MOTTAINAI」を大切にしたいと思います。私一人の力では人の意識を変えるには及ばないかもしれません。しかし、私は、勇気を持って、この「もったいない」を訴えたい。
 ご清聴ありがとうございました。


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