受賞年月
令和4年2月
受賞理由
氏の心豊かに暮らすライフスタイルとテクノロジーのあり方を追求し、持続可能な社会の実現に寄与された数々の功績
受賞者の経歴
【現在の主な職業】
地球村研究室代表
一般社団法人サステナブル経営推進機構理事長
東北大学名誉教授、京都大学特任教授
星槎大学特任教授/星槎大学サテライトカレッジin沖永良部島分校長
【学 歴】
1976(昭和51)年3月 山口大学工学部資源工学科卒業
1978(昭和53)年3月 山口大学大学院工学研究科修士課程修了
【学位・称号】
工学博士(名古屋工業大学)
【経 歴】
1978(昭和53)年 4月 伊奈製陶株式会社(その後 ㈱INAX, 現㈱LIXIL)入社
1984(昭和59)年 6月 同社窯業技術研究室(新設)室長
1992(平成 4)年 6月 同社空間技術研究所基礎研究所(新設)所長
1998(平成10)年 6月 同社技術統括部空間デザイン研究所(新設)所長
2000(平成12)年 6月 同社取締役CTO技術統括部部長 兼 (株)J.T.E取締役
2002(平成14)年11月 同社取締役CTO研究開発センター(新設)センター長
2004(平成16)年 4月 同社取締役CTO研究開発センター長 兼 環境戦略部(新設)部長
2004(平成16)年 6月 同社技術顧問
2004(平成16)年 9月 東北大学大学院環境科学研究科教授(環境創成機能素材学)
2005(平成17)年 4月 同高度環境政策・技術マネジメント人材養成ユニット(大学院コース)教授(兼任)研究代表
2010(平成22)年 4月 同国際エネルギー・資源戦略を立案する環境リーダー育成拠点教授(兼任)
2014(平成26)年 3月 東北大学退職。(合同会社)地球村研究室設立 『間抜けの研究』開始
2014(平成26)年 5月 沖永良部島移住。酔庵塾開塾(同9月)持続可能な島づくりの社会実装開始
2017(平成29)年 4月 星槎大学サテライトカレッジ in 沖永良部島開校
2019(令和 1)年10月 一般社団法人サステナブル経営推進機構(新設)理事長就任
【過去における表彰】
1992年 日本鉱物学会 鉱物工学奨励賞
1993年 アメリカセラミックス学会 ブルナウエル賞
1994年 セメント協会 論文賞
1996年 アメリカセラミックス学会 ブルナウエル賞
1998年 簡明技術推進機構 Port 賞
1999年 日本ファインセラミクス協会 技術振興賞
2000年 日本鉱物学会 応用鉱物学賞
2000年 日本セラミックス協会 学術論文賞
2000年 日本セラミックス協会 学術賞
2000年 アメリカセラミックス学会 フェロ—
2002年 中部科学技術センター 振興賞
2007年 キッズデザイン協議会 第1回キッズデザイン賞
2007年 公益財団法人日本産業デザイン振興会 グッドデザイン賞
2008年 東北大学環境科学研究科長教育賞
2010年 東北大学総長教育賞
2013年 公益財団法人イオン環境財団 第3回生物多様性日本アワード優秀賞
2013年 公益財団法人日本産業デザイン振興会 GOOD DESIGN AWARD 2013 BEST100
2013年 公益財団法人日本産業デザイン振興会 GOOD DESIGN AWARD 2013 未来づくりデザイン賞
主要著書・論文等
(2021.11現在)
研究論文 215報、総説等 298報、著書(監修、共著を含む) 73冊、特許 89件
報道等(新聞、雑誌、テレビなど) 639件、講演(学術講演以外も含む) 852件
学術賞など 18件
【研究論文】(215報のうち主なもの27報)
①建築用陶磁器素地のち密化過程に関する研究(第2報): 昇温速度が素地のち密化に与える影響. [日本セラ ミックス協会学術論文誌, 98 (9), (1990), 1006-1010] 石田秀輝,
②Characteristics of Clays from the Westerwald Deposits in West Germany(1) – Comparison of Extrudability with That of a Domestic Kibushi Clay : [日本セラミックス協会学術論文誌,98 (11), (1990), 1237-1277] H. Ishida and O. Watanabe
③Highly Reactive β—Dicalcium Silicate: I, Hydration Behavior at Room Temperature. [J. Am. Ceram. Soc.,75 (2), (1992), 353-58] H. Ishida K. Sasaki, and T.Mitsuda,
④Highly Reactive β—Dicalcium Silicate: II, Hydration Behavior at 25 ℃ Followed by 29Si Nuclear Magnetic Resonance. [J. Am. Ceram. Soc, 75 (2), (1992), 359-63]H. Ishida, Y. Okada and H. Ishida
⑤Highly Reactive β—Dicalcium Silicate: III, Hydration Behavior at 40-80 ℃. [J. Am. Ceram. Soc., 75 (9), (1992), 2541-2546] H. Ishida, K. Sasaki, Y. Okada and T. Mitsuda
⑥Highly Reactive β—Dicalcium Silicate: IV, Ball ‐ Milling and Static Hydration at Room Temperature. [J. Am. Ceram.Soc., 75 (10), (1992), 2779-2784]H. Ishida, K. Sasaki, A. Mizuno, Y. Okada and T. Mitsuda
⑦Low Temperature Synthesis of β—Ca2SiO4 from Hillebrandite. [J. Am.Ceram.Soc., 75 (9), (1992), 2427-2432] H. Ishida, K. Mabuchi, K. Sasaki, and T. Mitsuda
⑧β-Dicalcium Silicate Hydrate: Preparation, Decomposed Phase,and Its Hydration. [J. Am. Ceram. Soc., 76 (7), (1993), 1707-1712]H. Ishida, S. Yamazaki K. Sasaki, Y. Okada and T. Mitsuda
⑨29Si NMR Study of the Thermal Decomposition of Hydrothermally Formed Hillebrandite and Xonotlite. [Am. Ceram. Soc., Ceramic Trans., 37, (1993), 11-20]Y. Okada, K. Sasaki, H. Ishida and T. Mitsuda
⑩α-Dicalcium Silicate Hydrate: Preparation, Decomposed Phase,and Its Hydration. [J. Am. Ceram. Soc.,76 (7), (1993), 1707-1712]H. Ishida, S. Yamazaki K. Sasaki, Y. Okada and T. Mitsuda
⑪環境に優しい高機能無機系建材. [粉体と工業, 26 (6), (1994), 25-31] 石田秀輝
⑫電気泳動現象を利用した大型セラミック建材の成形. [ニューセラミックス, 7 (2), (1994), 44- 47]石田秀輝
⑬Structural Degradation of Tobermorite during Vibratory Milling. [J. Am. Ceram. Soc., 79 (6), (1996), 1569-1574] K. Sasaki, T. Masuda, H. Ishida and T. Mitsuda
⑭セラミックスのクローズド生産システムと土の水熱固化体. [金属 11, 68 (11), (1998), 57-62]石田秀輝
⑮セラミック練土の可塑性発現メカニズム(第1報)―粘土-水系,アルミナ-水系練土の微細構造―. [日本セ ラミックス協会学術論文誌, 106 (12), (1998), 1227] 石田秀輝, 他
⑯自然のすごさを賢く使う ~セラミックス建材と賢材~ . [日本開発工学会, 17 (1), (1998), 39-43]石田秀輝,渡辺修,進博人
⑰Environmentally friendly Manufacturing,processing and materials. [Transaction of the Materials Research Society of Japan, 24 (3), (1999), 395-399] Emile H. Ishida
⑱Consider People and the Earth, – A Wonder of Earth and New Materials -. [5th Asian Symposium on Ecotechnology in Toyama, J. Eco. Tech. Res.,(1999) (Toyama,Japan), 5 (1), (1999), 44-47] H. Ishida
⑲人と地球を考えたものつくり. [資源処理技術, 48 (4), (2001), 45-50] 石田秀輝
⑳新しい暮らしをつくるものつくり. [インテリジェント材料, 11 (2), (2001), 15-19] 石田秀輝
㉑すすむか、もどるか? —循環型企業への進化を求めて—. [開発工学, 21 (1), (2002), 32-40]石田秀輝
㉒Preparation of Poly (L-lactic acid) hybrid membrane with silicon-ion-releasing ability. [Key Engineering Materials, 330 (332), (2007), 1305-1308] H.Maeda, E.H.Ishida, T.Kasuga
㉓自然に学ぶ粋なテクノロジー ネイチャー· テクノロジー. [環境経営学会, 10 (1), (2010), 3-15]石田秀輝、古川柳蔵、前田浩孝
㉔東北大学大学院環境科学研究科における高度社会人環境人材養成プログラムの実践と課題. [環境科学会誌,24 (4), (2011), 320-328] 古川柳蔵 石田秀輝
㉕バックキャスティングによるライフスタイル ・デザイン手法とイノベーションの可能性.[高分子論文集, Vol.70 (7), (2013), 341-350] 古川柳蔵 · 石田秀輝
㉖未来をつくる新しいテクノロジーのかたち.[日本知財学会誌 Vol.13, 2 (2016)23-29]石田秀輝、古川柳蔵
㉗オントロジー工学に基づく心豊かなライフスタイルの構造の明示化 第1報 手法の提案. [環境学会誌 Vol.31,3(2018)89-102] 岸上裕子、古川柳蔵、須藤裕子、石田秀輝、溝口理一郎
【著書】(単著、共著、監修を含む73冊のうち主なもの23冊)
①自然に学ぶ粋なテクノロジー. [同人化学 2009] 石田秀輝
②地球が教える奇跡の技術(執筆担当部分)監修および、1,2,7,8 章. [祥伝社 2010]
石田秀輝 古川柳蔵 新しい暮らしとテクノロジーを考える委員会
③キミが大人になる頃に。環境も人も豊かにする暮らしのかたち. [日刊工業新聞社 2010]石田秀輝 古川柳蔵 電通グランドデザインラボラトリー
④Channeling the Forces of Nature -Saving the world as we know it- [東北大学出版会2010]Emile H. Ishida
⑤自然に学ぶ! ネイチャー · テクノロジー. [Gakken 2011] 石田秀輝 · 下村正嗣 (監修)
⑥未来の働き方をデザインしよう -2030年のエコワークスタイルブック- [日刊工業新聞社 2011] 石田秀輝、古川柳蔵 コクヨ㈱ RDI センター
⑦ヤモリの指から不思議なテープ. [アリス館 2011]石田秀輝 (監修)、松田素子 · 江口絵里(文)、西澤真樹子 (絵)
⑧すごい自然図鑑. [PHP 研究所 2011] 石田秀輝 (監修)
⑨自然界はテクノロジーの宝庫 未来の生活はネイチャー · テクノロジーにおまかせ! .[技術評論社2013] 石田秀輝 古川柳蔵
⑩それはエコまちがい? . [㈱プレスアート 2013] 石田秀輝
⑪2030年のライフスタイルが教えてくれる「心豊かな」ビジネス~自然と未来に学ぶネイチャー· テクノロ ジー~ . [日刊工業新聞社 2013] 石田秀輝 古川柳蔵
⑫Nature Technology ―Creating a Fresh Approach to Technology and Lifestyle. [Springer 2013] Emile H.Ishida ,Ryuzo furukawa
⑬科学のお話「超」能力をもつ生き物たち第 1、2、3、4 巻. [学研 2014] 石田秀輝監修
⑭地下資源文明から生命文明へ―人と地球を考えたあたらしいものつくりと暮らし方のか · た · ち―ネイチャー・テクノロジー. [東北大学出版 2014] 石田秀輝 古川柳蔵
⑮自然に学ぶ暮らし.小学校6年生教科書. [光村図書 2014] 石田秀輝
⑯光り輝く未来が沖永良部島にあった!. [ワニブックス 2015] 石田秀輝
⑰自然に学ぶ暮らし I .II, III [サエラ書房 2017] 石田秀輝監修
⑱ありがたーい生き物たち. [リベラル社 2019] 石田秀輝監修
⑲Lifestyle and Nature.[Pan Stanford Publishing 2019] Emile H. Ishida, Ryuzo Furukawa
⑳すごい技を持つ生き物図鑑. [文研出版 2019] 石田秀輝監修
㉑バックキャスト思考で行こう!. [ワニブックス 2020] 石田秀輝 古川柳蔵
㉒危機の時代こそ 心豊かに暮らしたい. [KKロングセラーズ2021] 石田秀輝
【特許】(登録済 89件のうち主なもの8件)
①長尺セラミックパネルの装飾方法 1987年2月26日出願(昭62- 43640)1987年2月26日登録(1848556)
②切削加工に優れたセラミックス焼結体及びその製法 1988年2月29日出願(88-2092)1990年9月14日登録(36005)
③陶磁器質製品の焼成条件の決定法 1987年5月11日出願(昭62-115675)1993 年10月28日登録(1796509)
④高温下のセラミックス成形物の音速測定方法 1988年5月24日出願(昭 63-126175)1993年12月27日登録(1812104)
⑤CaCO3 及び/又は MgCO3 の固化方法 1995年3月31日出願(19512163.5)1999年6月24日登録(P19512163)
⑥調湿材料とその製造法 1994年4月20日出願(平06- 81718)2003年1月24日登録(3391544)
⑦水熱固化体および水熱固化体の製造方法 2001年1月23日出願(01103339.8)2004年5月5日登録(ZL01103339.8)
⑧水和硬化体の製造方法 1996年7 月26日出願(平08-215152)2005年3月18日登録(3657703)
業 績
氏は、 ㈱INAXにて、主にセラミクスを基盤とした低環境負荷・高機能性材料の開発研究に従事し、39歳で基礎研究所所長に就任後、取締役 環境戦略委員会、技術戦略員会兼任議長CTOとして、低環境負荷素材である電気泳動を利用した超長尺セラミクスや水熱法を利用した不焼成セラミクスなどを世界で初めて開発、市場投入し、また、環境配慮型商品開発システムを創出、これらの研究開発を進めるための研究所(基礎研究所、空間デザイン研究所、研究開発センター)および環境戦略部を設立運営し、同社を環境先進企業として位置付けた。
これらの実績に対し、学術的には、アメリカセラミックス学会から2000年フェローの称号を与えられ、また、同年日本セラミックス協会から学術賞を受賞したほか、日本鉱物学会、セメント協会、アメリカセラミックス学会などから奨励賞、論文賞など計11賞を受賞した。
2004年東北大学へ奉職後は、環境配慮型テクノロジーの開発や市場投入が実際には環境負荷低減に貢献せず、環境劣化が加速する「エコ・ジレンマ」構造に着目し、一つの地球視点(人文・社会・自然科学視点)、鳥瞰的視点で考える「環境学」の構築に貢献してきた。
また、この間、地球環境問題が人間活動の肥大化に大きく牽引されていることから、その最小単位であるライフスタイル要素に着目し、社会科学を基盤としたバックキャスト思考によりライフスタイルを構築し、その要素テクノロジーを抽出、工学・理学連携による、完ぺきな循環を最も小さなエネルギーで駆動する自然のメカニズムやシステム、社会性を利用した、新しいテクノロジー創出システム(ネイチャー・テクノロジー)を開発、このシステムから無電源エアコン、水のいらない風呂、汚れが付きにくい表面、トンボの翅構造を利用した風力発電機等々の、斬新でライフスタイルの変革を促進する新規テクノロジーや素材を多く開発してきた。
このような研究は、学際横断的な視点が不可欠であることから、学内連携はもとより国際日本文化研究センターなどとの連携も進め、2007年には活動成果の浸透を加速するため、他の研究グループとも連携し、NPO法人「ものつくり生命文明機構」発足に参画、活動を推進した。
ライフスタイルを基盤として、必要なテクノロジーを完璧な循環を有する自然から創出するネイチャー・テクノロジーの手法は、革新的なテクノロジー創出法として評価され、2010年10月から2011年2月の間、国立科学博物館(上野)で「自然に学ぶネイチャー・テクノロジーとライフスタイル展」を開催、広く認知され、また、「自然に学ぶ粋なテクノロジー」(化学同人2009) 「地球が教える奇跡の技術」(祥伝社 2010)、「君が大人になるころに」(日刊工業 2010)、“Channeling the Forces of Nature –Saving the world as you know-”(Tohoku Univ. Press 2010)等を刊行し、広く啓発活動を続け、社会に大きなインパクトを与えた。これらの成果に対して、「第3回生物多様性アワード」(公益財団法人イオン環境財団 2013)、「GOOD DESIGN AWARD BEST 100 」、「GOOD DESIGN AWARD 未来づくりデザイン賞」(公益財団法人日本産業デザイン振興会2013)を受賞した。
2008年には、ネイチャー・テック研究会を設立、自然のすごさの採集とデータベースの公開を行っているが、そのWeb.サイト「すごい自然のショールーム」は、2007年の「グッドデザイン賞」(財団法人日本産業デザイン振興会)を、さらに、その素材を用いて特に子供たちを中心に行っている「自然のすごさ探検隊」の教育活動が、2007年「第1回キッズデザイン賞」(キッズデザイン協議会)を受賞するとともに、「ヤモリの指から不思議なテープ」(アリス館 2011)、「科学のお話し「超」能力を持つ生き物たち」(学研2014)、「ありがたーい生き物たち」(リベラル社2019)などの書籍を通して子供たちへの啓発活動を続け、その概念は、小学6年生国語の教科書では「自然に学ぶ暮らし」(光村図書 2014-18)が採用され、広く教育の場で活かされている。
特にライフスタイルに特化した研究は、研究代表者の一人として、「生物多様性を規範とする革新的材料研究」(文部科学省 新学術領域研究 領域代表者下村正嗣 2012-16)でオントロジー工学やバックキャスト手法、90歳ヒアリング手法などを使った手法が大きく展開し、厳しい地球環境制約の中で心豊かに暮らすという概念が明らかになり、Nature Technology(Springer 2013)、Lifestyle and Nature(Pan Stanford Pub. 2019)などの書籍を通して世界に発信、また、2014年4月に奄美群島沖永良部島に移住して、ライフスタイル変革の社会実装実験を開始した。同時に持続可能な社会の具体的な実装システムの提案を多くの国内市町村、企業と連携して進め、その成果の一部は「光り輝く未来が沖永良部島にあった!」(ワニブックス2015)、「危機の時代こそ心豊かに暮らしたい」(KKロングセラーズ 2021)として刊行された。また、沖永良部島では、氏が塾長の私塾“酔庵塾”において、サステナブルな島つくりに向けた具体的な活動の議論と実践が島人を中心に活発に展開されている。
教育活動では、2005年、環境学の実践の場として主に社会人の環境リーダー育成を目的とした大学院「高度環境政策・技術マネジメント人材養成ユニット」(JST 科学技術振興調整費 新興分野人材養成プログラム 2005-09年)を開講した。国際競争力を維持しながら、持続可能な社会の構築には、地球環境問題に対する正確な知識と判断力を持った上で、わが国が現在までに築いてきた高い技術力や知的インフラ資源を最大限活用する必要がある。しかしながら、わが国には先端技術に対する高いスキルやセンスを持ちながら、企業経営や社会構造の変革を牽引できるリーダーシップ力を持った人材が決定的に不足している。本プログラムは、地球環境問題、資源・エネルギー問題、人口問題などグローバルな環境問題、また、環境リスク管理などに関する正確な知識に加え、「環境政策」、「環境技術」、「環境経営」などの高度な環境マネジメント技術を習得させ、さらに、これらの知識と実践力を付けさせるためのトレーニングを組み合わせ、企業、行政、NPO などで環境行動の指導的役割を担える人材を育成することを目的とした日本初の教育システムである。本プログラムは2009年終了(評価A)したが、2010年からは、概算要求特別研究経費の措置を得て、さらに高度な環境リーダー育成のためのカリキュラム開発と教育を2014年まで続け、受講生は製造メーカー、行政官、マスコミ、コンサルタント、NPO/NGOなど多岐にわたり、新たに起業し、あるいは国際交渉の最前線など多くの分野で活躍している。
これらの成果に対し、2009年環境科学研究科研究科長教育賞を、2010年総長教育賞が授与され、さらに環境省「攻めの環境経営のためのグリーンMBA/MOT構築事業」の座長として、国際的な環境リーダー育成プログラムの開発にも尽力した。これら環境リーダー育成システムをさらに展開し、主に開発途上にあるアジア・アフリカ地域で、自国と関連国の双方に利益をもたらすことを考えられる高い視点と具体的なソリューションを導出可能な環境リーダー育成のため、「国際エネルギー・資源戦略を立案する環境リーダー育成拠点」(2010-14年科学技術振興調整費 戦略的環境リーダー育成拠点形成プログラム)を開講した。
さらに氏は現在、日本でのコロナ・パンデミックにおける生活行動の変容が新しい定常化社会創成の加速器になるとの仮説の下、Future Marketingという概念を提唱し、未来社会の革新的な描き方やそこに求められるビジネスや政策抽出方法の研究を、上記の活動と並行して精力的に進めている。また、培ってきた研究や企業・行政との多くの社会実験の成果を具体的に活かすため、2019年に設立された一般社団法人「サステナブル経営推進機構」の初代理事長として、企業・行政のサステナブル経営創成のために尽力している。
このように氏は、研究、教育、社会分野で、ともに革新的な研究開発テーマを具体的な形で創出し、社会にインパクトを与え続け、それらの成果は、学術論文215報、総説など298報、特許89件、学術関連顕彰18件、著書(共著・監修を含む)73冊、新聞・雑誌・テレビなどの報道や出演639件(2021.11現在)にも顕著である。
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