受賞年月
令和5年1月
受賞理由
小泉八雲の民俗学的業績を究明し、八雲を日・米における民俗学の先駆者として位置付けるとともに、出雲地方の振興並びに海外との文化交流に寄与した数々の功績
受賞者の経歴
【現在の主な職業】
小泉八雲記念館館長
一般社団法人松江観光協会アドバイザー
焼津小泉八雲記念館名誉館長
島根県立大学短期大学部名誉教授
【学 歴】
1984(昭和59)年 3月 成城大学文芸学部文化史学科卒業
1987(昭和62)年 3月 成城大学大学院文学研究科日本常民文化専攻博士課程前期修了
【学位・称号】
文学修士(成城大学)
【経 歴】
1987(昭和 62)年4月 松江市立女子高等学校講師兼松江市総合文化センター特別講師
1996(平成 8)年4月 島根県立島根女子短期大学 講師
2001(平成 13)年9月 米国ワシントン州立セントラルワシントン大学 交換教授
2002(平成 14)年4月 島根県立島根女子短期大学 助教授
2007(平成 19)年4月 島根県立大学短期大学部 准教授
2009(平成 21)年4月 島根県立大学短期大学部 教授
2018(平成 30)年4月 小泉八雲記念館館長、島根県立大学短期大学部名誉教授、島根県立大学、
島根大学非常勤講師、一般社団法人松江観光協会アドバイザー
(その他)関西学院大学大学院文学研究科、大阪青山大学、島根大学法文学部などで集中講義、
国内外で小泉八雲に関する講演活動を行う。日本民俗学会理事(2020-2022)
現在、日本アイルランド協会理事、山陰日本アイルランド協会副会長、文化資源学会会員、日本ペンクラブ会員、八雲会名誉顧問、日本英学史学会中国四国支部顧問、焼津小泉八雲記念館名誉館長、公益財団法人池田記念スポーツ文化財団理事、公益財団法人エネルギア文化・スポーツ財団理事、島根県立美術館協議会会長、松江市伝統文化芸術振興審議会審議委員、三次もののけミュージアム運営協議会委員
【過去における表彰】
2009年 松江市特別功労者表彰
2017年 外務大臣表彰(日本アイルランド友好親善貢献)
主要著書・論文等
【主要著書】
・『ラフカディオ・ハーン著作集』第15巻、恒文社、1988年。pp631-671を執筆。「ラフカディオ・ハーン年譜 」の横浜・松江時代を執筆
・小泉凡著『民俗学者・小泉八雲―日本時代の活動から―』恒文社、1995年
・『民俗的世界の探求―かみ・ほとけ・むら―』慶友社、1996年。pp112-136.「妖怪観の一考察―L・ハーンと井上円了の交友をめぐって―」を執筆
・『カリブ―響きあう多様性―』ディスクユニオン、1996年。pp70-77.「クレオール、世紀末の旅から―ラフカディオ・ハーンとともに―」を執筆
・小泉時・小泉凡共編著『文学アルバム小泉八雲』恒文社、2000年(2008年に増補新版)
・銭本健二・小泉凡共著『八雲の五十四年~松江からみた人と文学~』松江今井書店、2003年
・『松江人物ものがたり―近世・近代に生きた人たち―』松江市教育委員会、2004年。pp200-247.「小泉八雲・セツ」を執筆
・西川盛雄編『ラフカディオ・ハーン―近代化と異文化理解の諸相』九州大学出版会、2005年。pp171-188.「没後100年に思う、ハーンの未来性」を執筆
・中央大学人文科学研究所編『ケルト口承文化の水脈』中央大学出版部、2006年。pp429-463.第3部第12章「ラフカディオ・ハーンにおける口承文化の受容と継承」を執筆。
・島根大学附属図書館小泉八雲出版編集委員会『教育者ラフカディオ・ハーンの世界―小泉八雲の西田千太郎宛書簡を中心に』ワンライン、2006年。pp455-469.「ハーンのホームスクーリング」を執筆
・『宮本常一のメッセージ-周防大島郷土大学講義録-』みずのわ出版、2007年。pp64-85.「小泉八雲と宮本常一-旅人がのこしたものー」を執筆
・平川祐弘・牧野陽子編『講座小泉八雲Ⅰ ハーンの人と周辺』新曜社、2011年。pp569-585.「護符蒐集とその意味」を執筆
・島根大学附属図書館ハーン図書出版編集委員会編『ニューオーリンズとラフカディオ・ハーンー「死者たちの町」が生む文化混淆の想像力―』今井印刷株式会社、2011年。pp20-37.「ニューオーリンズという町」を執筆
・池田雅之・高橋一清編『古事記と小泉八雲』かまくら春秋社、2013年。pp105-123.「小泉八雲が歩いた『古事記』の世界」を執筆
・小泉凡著『怪談四代記―八雲のいたずら―』講談社、2014年(2016年に文庫化)
・井口貢編『観光学事始め―「脱観光的」観光のススメ―』法律文化社、2015年。pp138-151..第10講「文化資源としての人」を執筆
・池田雅之編『祈りと再生のコスモロジー―比較基層文化論序説―』成文堂出版部、2016年。pp555-570.「再生する文学―文化資源としてのラフカディオ・ハーン」を執筆
・小泉凡監修、執筆『小泉八雲記念館図録 小泉八雲、開かれた精神(オープン・マインド)の航跡。』小泉八雲記念館、2016年
・香川雅信・飯倉義之編『47都道府県妖怪伝承百科』丸善出版、2017年。pp215-220.「島根県」を担当
・花部英雄・小堀光夫編『47都道府県民話百科』丸善出版、2019年。pp204-208.「島根県」を担当
・小泉凡監修・解説『小泉八雲の怪談づくし』八雲会、2021年
・Bon Koizumi, “The Cultural Correspondence of Japan and Ireland through Patrick Lafcadio Hearn,” Crossings- Celebrating Sixty Years of Diplomatic Relationships between Ireland and Japan, pp.195-204, Cork University Press, 2022.
【主要論文等】
・小泉凡「境界の神―日本人の病理観から―」『日本民俗学』159号、日本民俗学会、pp35-51.(1985年)
・小泉凡「小泉八雲と民俗学―来日後の著書の分析を中心として―」『山陰民俗』49号、山陰民俗学会、pp.10-28.(1987年)
・小泉凡「小泉八雲と出雲大社」『季刊悠久』第49号、桜楓社pp.89-101.(1992年)
・小泉凡「ラフカディオ・ハーンと日本の伝承文化―日本観の一考察―」『季刊悠久』第52号、桜楓社、pp.84-91.(1993年)
・小泉凡「再生の文学―小泉八雲とケルトの想像力―」『岩波講座日本文学史』月報12、pp.4-6.(1996年)
・小泉凡「小泉八雲の怪奇探求」『歴史と旅』増刊号(第26巻第14号)「日本史の恐怖残酷物語集」、秋田書店pp.196-203.(1999年)
・小泉凡「解説―先祖の記憶」(文庫本解説)阿刀田高著『怪談』、幻冬舎pp.757-765.(2001年)
・小泉凡「パーシバル・ローエルの新書簡に関する考察」『島根女子短期大学紀要』第38号、島根県立島根女子短期大学、pp.51-61.(2000年)
・小泉凡「松江、山陰とアイルランド―小泉八雲による文化交流とまちづくり―」『観光文化』176号、財団法人日本交通公社、pp6-9.(2001年)
・小泉凡「現代社会からみたラフカディオ・ハーン―6つの観点から―」『英語教育と英語研究』第20号、島根大学教育学部英語教育研究室、pp.9-21.(2004年)
・小泉凡「来日外国人のみた日露戦争―ラフカディオ・ハーンと戦時下の日本―」『明治聖徳記念学会紀要』第41号、明治聖徳記念学会pp.63-76.(2005年)
・小泉凡「松江、山陰とアイルランド―小泉八雲による文化交流とまちづくり―」『観光文化』176号、財団法人日本交通公社、pp6-9.(2006年)
・小泉凡「柳田國男と小泉八雲―五感力の継承をめざして―」『民俗学研究所紀要』第31集、成城大学民俗学研究所、pp.1-32.(2007年)
・小泉凡「イギリスに渡った出雲の護符」『山陰民俗研究』第13号、山陰民俗学会、pp.3-25.(2008年)
・小泉凡「小泉八雲の海」『文学』第2巻第6号、岩波書店pp.185-188.(2008年)
・小泉凡「護符にみる出雲信仰」藝術文化雑誌『紫明』30号、紫明の会、pp.30-34.(2012年)
・小泉凡「小泉八雲(Lafcadio Hearn)を現代に生かす」『関西大学東西学術研究書紀要』40号、関西大学東西学術研究所、pp.229-243.(2013年)
・小泉凡「文化資源として生かす小泉八雲―松江における3つの実践から」『文化資源学』第11号、文化資源学会、pp.3-9.(2013年)
・小泉凡「松江の怪談―文化資源としての価値と未来を考える」『湖都松江』26号、松江文化協会、pp.13-24.(2013年)
・小泉凡「ラフカディオ・ハーンの民俗学的想像力とケルトのフォークロア」『エール(アイルランド研究)』第33号、日本アイルランド協会、pp.43-53.(2014年)
・小泉凡「再話文学と小泉八雲」『多摩のあゆみ』第108号、たましん文化財団pp.8-19.(2014年)
・小泉凡「オープン・マインド・オブ・ラフカディオ・ハーン―ギリシャから日本への魂の遍歴」『国際シンポジウム「オープン・マインド・オブ・ラフカシオ・ハーン」報告書』同実行委員会(2014年)
・小泉凡「地域資源としての小泉八雲と怪談」『かけはし』2015年4月号、公益財団法人産業雇用安定センター(2015年)
・小泉凡「小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の文化資源的活用に関する考察」『島根県立大学短期大学部松江キャンパス研究紀要』第54号、pp71-80.(2016年)
・小泉凡「社会資源としての作家と文学―小泉八雲の『オープン・マインド』を生かす実践から―」『JICE40周年記念エッセイ―つながる心、響きあう未来―』一般財団法人国際協力センター(2017年)
・小泉凡「小泉八雲にみる説話伝承と再話怪談」『昔話―研究と資料―』第46号、pp5-19.日本昔話学会(2018年)
・小泉凡「小泉八雲と水木しげるの響きあう妖怪観―怪異の資源化にふれて―」『東アジア比較文化研究』東アジア比較文化国際会議日本支部、pp3-19.(2018年)
・小泉凡「小泉八雲、妖怪へのまなざし」の寄稿及び多数の画像提供(『小泉八雲―放浪するゴースト』新宿区立新宿歴史博物館、2020年)
・小泉凡「巻頭言 世界にひろがる小泉八雲のオープン・マインド」の執筆および多数の画像提供(池田雅之監修『別冊太陽 小泉八雲―日本の霊性を求めて』平凡社、2022年)
【主要学術講演等】
・”Lafcadio Hearn and Japanese Ghosts,” A Ghost Story Conference : Supernatural Lore of Asia(アメリカ合衆国、ハワイ大学カピオラニ・コミュニティー・カレッジ、1991年)
・”The Open Mind of Lafcadio Hearn in New York”(「ニューヨークから考えるラフカディオ・ハーンの開かれた精神」)The Open Mind of Lafcadio Hearn in New York, Lecture, and Book and Art Exhibition(オープン・マインド・オブ・ラフカディオ・ハーン講演と造形美術展、アメリカ合衆国、ニューヨーク市、日本クラブ、2011年)
・“The Open Mind of Lafcadio Hearn in New Orleans”(「ニューオーリンズから考えるラフカディオ・ハーンの開かれた精神」) , The Open Mind of Lafcadio Hearn in New Orleans, Lecture, and Book and Art Exhibition(オープン・マインド・オブ・ラフカディオ・ハーン講演と造形美術展、アメリカ合衆国ルイジアナ州ニューオーリンズ、テュレーン大学、2012年)
・”The Open Mind of Lafcadio Hearn―A Spiritual Odyssey from Greece to Japan,”(「オープン・マインド・オブ・ラフカディオ・ハーン―ギリシャから日本への魂の遍歴―」)、International Sympojium, “The Open Mind of Lafcadio Hearn : His Spirit from the West to the East”(国際シンポジウム・オープン・マインド・オブ・ラフカディオ・ハーン―西洋から東洋へ―、ギリシャ共和国、レフカダ市、ホテル・イオニアン・ブルー、2014年)
・「沖縄で考える、アイルランドの民俗文化―チェンバレン、ハーン、水と海の信仰―」、日本アイルランド協会第27回研究年次大会講演(名護市、沖縄工業高等専門学校、2019年)
・「小泉八雲、『ジオ』へのまなざし」、第11回日本ジオパーク全国大会特別講演(松江市、くにびきメッセ2021年)
業 績
・小泉八雲の民俗学的研究と社会的活用
従来、作家・英文学者・ジャーナリストとして評価されてきた小泉八雲の民俗学的事績に注目し、日本・アメリカにおける民俗学の先駆者として民俗学史への位置づけを行った。とりわけ、八雲の松江時代の超自然的伝承採集と晩年の再話文学としての怪談創作の強い因果関係を究明。その研究を活かし、作家の木原浩勝氏とともに、「怪談のふるさと」としての「松江」の新しい魅力創出を提唱した。
具体的には、夜の松江を語り部の怪談を聴きながら散策する「松江ゴーストツアー」(2008年~現在、日本初の夜の怪談観光として注目される)の発案・実践や木原浩勝氏との「松江怪談談義」(2012年~現在)の開催、小泉八雲記念館企画展「小泉八雲、妖怪へのまなざし」(2020年―2021年)の開催などの社会的実践を試み、交流人口・関係人口の拡大に貢献するとともに、SDGsの観点からも人間中心主義への反省を促す機会を提供している。「松江ゴーストツアー」は、開始から4年目の2011年以降、県外からの参加者比率が7割を超え、コロナ禍の2022年もキャンセル待ちがでるほどの人気の着地型観光プランとして定着している。
2022年11月には、イタリア・ミラノで開催された展示会”Fantasmi & Spiriti del Giappone”(「日本の幽霊と精霊たち」)で5回のギャリー・トークと講演を行い、小泉八雲と日本の妖怪やアニミズム文化についての理解の促進につとめた。
また、2020年から、島根県松江市の「小泉八雲記念館」と鳥取県境港市の「水木しげる記念館」、広島県三次市の「三次もののけミュージアム」の「もののけ三館周遊パスポート」を提案し、中国地方の<みえざるものの文化>に着目した地域活性化に取り組んでいる。一連の活動は、怪談文化を文化資源・観光資源として活用することの有用性を示唆している。
・小泉八雲の「オープン・マインド」に着目した社会的実践
ギリシャ人の八雲研究者、タキス・エフスタシウ氏とともに、小泉八雲の精神的支柱をなす「オープン・マインド(偏見をもたずに対象をリスペクトするまなざし)」に着目し、持続可能な共生社会実現に活かすべく種々の社会活動を行っている。
具体的には、2009年に「The Open Mind of Lafcadio Hearnプロジェクト」を立ち上げ、アテネ・アメリカンカレッジ(2009)、松江城天守閣および小泉八雲記念館(2010)、ニューヨーク・日本クラブ(2011)、ニューオーリンズ・テュレーン大学(2012)において現代アートで八雲のオープン・マインドを表現するアート展を実施。2014年にはギリシャ・レフカダで八雲のオープン・マインドを検証する国際シンポジウム、2015年にはアイルランド・ダブリンで企画展やシンポジウムの開催に尽力。八雲の渡米150年にあたる2019年にはニューヨーク、シンシナティ、ニューオーリンズで八雲作品の朗読パフォーマンスを主軸とした”The Open Mind of Lafcadio Hearn in USA”を開催。さらに、2020年には南アフリカ共和国プレトリア大学主催ウェビナー”The Open Mind of Lafcadio Hearn-Light from the East”の実現に発表者、資料提供者として貢献する。2007年からは、松江出身の俳優・佐野史郎氏、ギタリスト・山本恭司氏とともに、八雲のオープン・マインドを世界へ発信する「小泉八雲朗読のしらべ」(トーク・朗読・音楽のコラボ)を国内外で60回以上開催している。
また、小泉八雲を通してオープン・マインドと五感力の大切さを小学生に学んでもらう教育実践「子ども塾―スーパーへるんさん講座」を提案し、松江市と連携して実施。2004年から現在まで、塾長をつとめている。一連の活動は、小泉八雲のオープン・マインドという精神性を「文化資源」として社会へ活かし、未来へ継承することを目的とする取り組みであり、文学の新たな社会的活用の可能性を示唆している。
・アイルランドとの文化交流
小泉八雲の祖国、アイルランドとの文化交流にも尽力している。1994年には松江に本部を置く山陰日本アイルランド協会設立に参画し(現在、同副会長)、アイリッシュ・フェスティバル(毎年3月に松江市で開催)の実行委員長としてアイルランドと山陰の文化交流につとめている。
1997年には八雲会が主催したダブリンでの小泉八雲国際シンポジウムへの参画、2015年にはアイルランド・ダブリンでのシンポジウムおよび企画展”The Open Mind of Lafcadio Hearn-Coming Home”への参画、2017年には滋賀大学・真鍋晶子教授とともに大蔵流狂言茂山千五郎家による「小泉八雲新作狂言」をダブリン、ゴールウェイ、ウォーターフォードの3都市で開催し、その際に講演を行う。また、トラモア(ウォーターフォード州)の”Lafcadio Hearn Japanese Gardens”(2016年オープン)の開園に際し、アイルランド政府の要請に応じて実現に向けた貢献を行う。
2017年には日本とアイルランドの友好親善貢献で妻の小泉祥子ともども外務大臣表彰。2022年は沖縄本土復帰50年にあたることから、現在は響き合うアイルランドと沖縄の民俗文化に関する講演活動も行っている。
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