受賞年月
平成27年2月
受賞理由
国際連合で働く日本人女性の先駆的存在として、アフリカをはじめ開発途上国への開発協力の促進、紛争地域での武装解除と平和構築、並びに「アフリカ開発に関する東京国際会議」(TICAD)の共同開催者国連代表などの国際的な貢献。
受賞者の経歴
【主な職業】
国連機関に33年間勤務(国連事務局、国連開発計画、国連食糧農業機関、国連食糧計画)
現在、AU-NEPAD (アフリカ連合) 開発機構総裁特別顧問
横浜市立大学 客員教授、 日本国連友好協会 ニューヨーク代表、住友化学副社長付特別顧門 上級コンサルタント
【学 歴】
1970年~1972年 東京女子大学在籍
1973年~1976年 カナダ・ブリティッシュコロンビア州立 サイモンフレイザー大学在籍政治学専攻
1977年~1979年 スウェーデン国立ストックホルム大学国際大学院在籍
1978年~1980年 スウェーデン国立ストックホルム大学社会人類学大学院在籍
・サイモン・フレーザー大学及びストックホルム大学社会人類学大学院において、政治学、開発経済学、社会人類学を専攻
・カナダ・インディアン及び北極圏の住民サーメ族の生態・社会の調査研究に従事。少数民族の抱える困難な問題を体験し、社会を見る目を学ぶ。
・スウェーデン国立ストックホルム大学国際大学院において、スウェーデンの対ヴィエトナム援助の研究により国際開発経済学の修士学位を、また人類学大学院でのサーメ族の研究により、2つ目となる社会人類学の修士学位を修得した。
【学位・称号】
国際開発経済学修士号
社会人類学修士号
【経 歴】
1972年 インターアルファ銀行グループ(フランス、フィンランド、ドイツ、イタリア、スウェーデン、スイス、イギリス)
東京代表事務所入社
1975年 日本ステンレス株式会社国際部コンサルタント
1976年 ガデリウス株式会社入社
1980年 国連食糧農業機関 アジア、パシフィック地域局 アソシエイト エキスパート
1981年 国連食糧農業機関 人材育成農業改革部 社会開発調整官
1982年 国連食糧計画 アジア、パシフィック地域局プロジェクト マネジメント調整官
1987年 国連食糧計画 事務総長室 上級企画調整官
1990年 国連副事務総長室 開発協力政策官
1993年 国連本部事務局経済社会総局 上級開発協力官
1997年 国連開発計画アフリカ局 上級企画調整官
1999年 国連食糧農業機関「南南協力」開発途上国間協力推進部長
2000年 国連食料農業機関 民間セクター及びNGO協力推進部長
2002年 国連事務局アフリカ担当事務総長特別顧問室 政策調整プログラム開発支援主任
2013年 AU-NEPAD (アフリカ連合) 開発機構総裁特別顧問(~現在)
・・・・横浜市立大学 客員教授( 〃 )
・・・・日本国連友好協会 ニューヨーク代表( 〃 )
・・・・住友化学副社長付き 特別顧門 上級コンサルタント( 〃 )
【過去における表彰】
ニューズウィーク 2007 世界が認めた日本人女性100人
【主要著書・論文】
『Academics』
1. Role of education in integrating Canadian aboriginal people into Canadian society, Vancouver 1975.
2. Evaluation of Swedish aid to Viet num, Stockholm, 1978.
3. Ethnic movement and political articulation, comparative studies of Scandinavian aboriginal people “same” among Sweden, Norway, and Finland, university of Stockholm.1979.
4. Japanese women, their inter- and inter- family activities, university of Stockholm, 1980.
5. The Sisters of Sun, United Kingdom, 1980
『TICAD Related』
1.Analysis and Perception of TICAD Process, United Nations University, Tokyo, Japan,2004.
2.The revolution of the TICAD process and Japan’s relations with Africa, Lead University,United Kingdom , 2009.
『Asia-Africa Cooperation』
1.Working Together Towards The Twenty-first Century, Bandung Framework for Asia-Africa Cooperation, Bandung, December 1994
2.Partners in Progress, Africa and the International Community, August 1996
3.The Asia-Africa Forum on Combatting Desertification, Beijin, 1997
『Substantive subjects』
1.Programme of Action for Advancing Financial Intermediation in Africa, at the Asia-Africa High-Level Workshop, Mauritius, 20-22 April 1998
2.Role of Japan and the United Nations, Tsukuba University, Japan 2004.
3.Crises and the MDGs: Nexus between Peace and Development in Africa – Minimum Agenda for All Stakeholders, New York, 2005
4.Creating an environment at the national and international levels conducive to generating full and productive employment and decent work for all, and its impact on sustainable development, Geneva, 2006
5.Youth in Africa: Participation of Youth as Partners in Peace and Development in Post-Conflict Countries, November 2006, Windhoek, Namibia
6.International Cooperation and Role of the United Nations, University of Brussels, 2006
7.The role of the UN in Peace, Security and Development in Africa, Bradford University,UK, 2006.
8.The Secretary General report on causes of conflicts and promotion of durable peace and sustainable development in Africa, United Nations, annually since 2006 to 2013.
9.Promoting pro-poor generation of wealth, food security and peace through sustainable forest management: Global Realities and Regional Innovations, New York, 2007
10.Overview of Disarmament, Demobilization and Reintegration in Africa, 2007
11.Security Sector Reform in Africa, 2007
12.Transitional Justice in post conflict African countries, 2007
13.Ex-combatants in Foreign Soil, 2007
14.Consolidation of Peace in Africa, Chatham House, London, United Kingdom, 2008
15.The evolution of UN and cooperation between Japan and Africa, Waseda University,Tokyo, Japan, 2008
16.The impact of climate change on food security in Africa and the Least Developing Countries, New York, 2008
17.Bioenergy, sustainable livelihoods and rural poor in Africa and the Least Developing countries, New York, 2008
18.Digital Health and Development in Africa and the Least Developing Countries, Geneve, 2009
19.Role of Civil Society in peace and development in Africa, Kenya, 2010
20.Economic Opportunities for the Empowerment of Women in Africa and Least Developing Countries: Access to Credit, Land and Markets, New York, 2010
21.Gender Dimension of Security Sector Reform in Africa, 2010
22.The Role of Regional Economic Communities in peace and development in Africa, Kenya, 2011.
23.The gender dimension of education in post-conflict African countries and Least Developing Countries”, Geneve, 2011
24.The Role of Diaspora: dialogue between African Diaspora Parliamentarians and Pan-African Parliamentarians, New York , 2011
25.Management of Diversity in Africa, Kofi Anan Peace Keeping Training Center, hana,2012
26.Ministerial Roundtable discussion paper on “Addressing Youth Employment as a strategy for Conflict Prevention and Peace Building in Africa”, New York, 2012
受賞者の業績
氏の業績は、次のとおりである。
1980年、国連の専門機関である食糧農業機構(FAO)に日本人女性最初のアソシエイトエキスパートとして入り、1983年には国連世界食糧計画(WFP)に移籍し、食糧援助を通じて開発問題に取り組んできた。
特にパキスタンとブータンを担当し、ブータンでは学校給食制度を導入し、男子の初等教育出席率を2倍、女子は3倍に増加する実績を作った。同国における義務教育の普及に貢献し、同政府から表彰を受けた。また、パキスタンにおいては、森林プロジェクトやアフガニスタン難民援助プロジェクトを着手した後、世界食糧計画(WFP)総裁室付の上級企画調整官として、WFP業務全体の企画、調整を担当した。
1990年、ニューヨークの国連本部事務局に移り、経済社会総局にて国連経済社会理事会を担当した後、1993年に「アフリカ問題担当特別調整官室」(国連の諸機関が取り組んでいるアフリカ経済社会開発に関連する諸活動を国連本部において綜合的に調整するために設立された組織)において、アフリカ経済社会開発問題を直接担当する機会を得た。
その間、日本政府のイニシアティヴによって開催された第1回「アフリカ開発に関する東京国際会議」(TICAD)に置いて国連が共催者になる交渉に成功し、それに基づき、同会議の準備のため、約7ヶ月、日本外務省(中近東アフリカ局)に勤務する経験を持った。
1995年、第1回東京会議で合意された「開発のためのアジア・アフリカ協力」を具体的に実践していく必要があるとの考えから、国連の機関として実際の開発協力に取り組んでいる「国連開発計画」(UNDP)に移り、具体的なアジア・アフリカ協力の推進に取り組んだ。
1998年、ディレクター・レベルに昇進し、嘗て勤務した「食糧農業機構」(FAO)に転勤、同機構において、アジア・アフリカ協力の一環として所謂「南南協力」を促進する部署、更に、民間セクターとの協力を推進する部署の長として、開発途上国間協力の推進、NGO, 民間企業等との協力に取り組んだ。また、FAOが実施する開発協力を実施するための任意的資金調達に取り組み、約10億ドルの基金設置に成功した。
2002年、再び国連本部勤務となり、「アフリカ問題担当事務総長特別顧問室」(「アフリカ問題担当特別調整室」が改組され、経済社会開発のためには政治、社会の安定が不可欠であり、そのためには、紛争解決、平和構築等含む総合的な取り組みが必要であるとの観点から、事務総長はそのための「特別顧問」を任命)において、紛争解決、武装動員解除(DDR)、治安維持機構の再構築(Security Sector Reform, SSR)等のいわゆる「平和構築」問題に取り組んだ。
33年間の国連組織勤務を終え、2013年6月に退職した。
この期間、アジアでは15カ国(バングラデッシュ、ブータン、中国、インド、インドネシア、日本、ネパール、モリーブス、マレーシア、パキスタン、フィリピン、韓国、スリランカ、イエメン)、アフリカでは28カ国(ベナン、ボツワナ、ブルキナファソ、カメルーン、象牙海岸、コンゴ民主主義共和国、エジプト、エチオピア、ガーナ、ガボン、ギニア、ケニヤ、レソト、リベリア、モロッコ、モザンビーク、モーリシャス、マリ、ナミビア、セネガル、シエラレオネ、南アフリカ、シェセール、タンザニア、チュニジア、ウガンダ、ザンビア、ジンバブエ)の国々を訪問し、それぞれの国において貢献を果たした。
その貢献は、政策分野のみならず各国それぞれの政府レベル、そして現場における農村地域やコミュニティーレベル、特に貧困や紛争による被害者等への支援などが含まれている。
一方、国連で勤務する日本人の先駆的存在として国連日本人会会長を務めるなど、後進の指導・育成にも尽力した。
国連退職後、現在、 AU-NEPAD (アフリカ連合) 総裁特別顧問、横浜市立大学客員教授、 日本国連友好協会 ニューヨーク代表 、住友化学副社長付特別顧門上級コンサルタントとして活躍している。