受賞年月
令和6年1月
受賞理由
江戸文学・文化研究の第一人者として、日本近世文化・アジア比較文化の発展に寄与した数々の功績並びに現代における政治・社会が抱える問題に向けた幅広い活動
受賞者の経歴
【現在の主な職業】
法政大学名誉教授
法政大学江戸東京研究センター特任教授
【学 歴】
1974年 3月 法政大学文学部日本文学科卒業
1977年 3月 法政大学大学院人文科学研究科日本文学専攻博士前期課程修了
1980年 3月 法政大学大学院人文科学研究科日本文学専攻博士後期課程単位取得満期退学
【学位・称号】
文学修士
【経 歴】
1980年 4月 法政大学第一教養部専任講師
1983年 4月 法政大学第一教養部 助教授
1986年 4月 北京大学交換研究員(~1986年9月31日)
1991年 4年 法政大学第一教養部 教授
1993年 4月 英国オックスフォード大学在外研究員(~1994年3月31日)
2003年 4月 法政大学社会学部メディア社会学科教授(~2021年3月31日)
2007年 4月 法政大学国際日本学インスティテュート兼担教授(~2021年3月31日)
2012年 4月 法政大学社会学部長(~2014年3月31日)
2014年 4月 法政大学総長就任(東京六大学では初の女性総長)
2021年 3年 法政大学総長退任
2021年 4月 法政大学名誉教授、法政大学江戸東京研究センター特任教授
【その他】
2014年 4月 公益財団法人大学基準協会理事(~2020年3月)
2014年 6月 一版社団法人日本私立大学連盟常務理事(~2021年3月)
2017年 10月 放送大学理事(~2021年3月)
2020年 4月 公益財団法人大学基準協会常務理事(~2021年3月)
2021年 4月 東京都男女平等参画審議会会長(~2023年4月)
2021年 6月 東京芸術文化評議会評議員(~現在)
2021年 6月 一般社団法人日本オープンオンライン教育推進協議会副理事長(~現在)
2021年 9月 法政大学評議員(~現在)
2022年 4月 人間文化研究機構教育研究評議会評議員(~現在)
2023年 4月 国際日本文化研究センター共同研究員 (~現在)
【過去における表彰】
1986年度芸術選奨文部大臣新人賞
2000年度芸術選奨文部科学大臣賞
2001年度サントリー学芸賞
2005年度紫綬褒章
主要著書・論文等
【単著】
・『言葉は選ぶためにある 江戸から見ると』青土社 2024/02
・『女だろ! 江戸から見ると』青土社 2023/11
・『落語がつくる<江戸東京>』(編著)岩波書店 2023/09
・『遊廓と日本人』講談社 2021/10
・『苦海・浄土・日本 石牟礼道子 もだえ神の精神』集英社 2020/10
・『江戸から見ると』1・2 青土社 2020/10
・『自由という広場 法政大学に集った人々』法政大学出版局 2016/04
・『そろそろ「社会運動」の話をしよう』(編著)明石書店 2014/10
・『鄙への想い』清流出版 2014/03
・『The Power of the Weave』International House of Japan 2013/03
・『グローバリゼーションの中の江戸』岩波書店 2012/06
・『世渡り 万の智慧袋』集英社 2012/04
・『布のちから』朝日新聞出版 2010/12
・『江戸っ子はなぜ宵越しの銭を持たないのか?』小学館 2010/06
・『未来のための江戸学』小学館 2009/10
・『春画のからくり』筑摩書房 2009/04
・『カムイ伝講義』小学館 2008/10
・『芸者と遊び-日本的サロン文化の盛衰』学研、KADOKAWA 2007/06
・『手仕事の現在』(編著)法政大学出版局 2007/05
・『江戸の懐古』編著・監修 解説講談社 2006/02
・『江戸を歩く』集英社 2005/11
・『きもの草子』淡交社 2005/04
・『樋口一葉「いやだ!」と云ふ』集英社 2004/07
・『江戸の恋』集英社 2002/04
・『江戸百夢』朝日新聞出版局 2000/06
・『張形と江戸女』河出書房新社(のち筑摩書房)1999/11
・『山東京伝と江戸のメディア』NHK出版 1995/09
・『愛の巡礼記』朝日新聞出版局 1993/02
・『江戸はネットワーク』平凡社 1993/02
・『連―対話集』河出書房新社 1991/05
・『近世アジア漂流』朝日新聞社 1990/12
・『江戸の音』河出書房新社 1988/03
・『江戸の想像力』筑摩書房 1986/09
【共著】
・『私たちは黙らない!』(田中優子、望月衣塑子、岡野八代、奥谷禮子、平井美津子ほか)日本機関紙出版センター 2023/4
・『東アジアの都市とジェンダー 過去から問い直す』(小林ふみ子、染谷智幸、鄭敬珍、田中優子ほか)文学通信 2023/3
・Waterside Culture in Edo 『Storia Urbana』(pb:Franco Angeli)2022/4 p27-64
・『水都としての東京とヴェネツィア:過去の記憶と未来への展望』(ローザ・カーロリ、陣内秀信、田中優子ほか)法政大学出版局 2022/1
・『手塚マンガの共生する社会』(田中優子、山極壽一、前川喜平ほか)子どもの未来社 2022/1
・『最後の文人 石川淳の世界』(鈴木貞美、田中優子、小林ふみ子、帆苅基生、山口俊雄)集英社 2021/04
・『江戸問答』(松岡正剛、田中優子)岩波書店 2021/01
・『江戸とアバター』(池上英子、田中優子)朝日新聞出版 2020/03
・『日本問答』(松岡正剛、田中優子)岩波書店 2017/11
・『映画は文学をあきらめないーひとつの物語からもうひとつの物語へ』(池内了、篠田正浩、山田太一、田中優子ほか)水曜社 2017/03
・『日本人は日本をどうみてきたか――江戸から見る自意識の変遷』(大木康、横山泰子、JANA URBANOVÁ、田中優子、内原英聡ほか)笠間書院 2015/03
・『子どもはなぜ勉強しなくちゃいけないの?』(田中優子、あさのあつこ、土屋賢二、五味太郎、平田オリザほか)日経BP 2014/12
・『降りる思想: 江戸・ブータンに学ぶ』(辻信一、田中優子)大月書店2012/10
・『池波正太郎・自前の思想』(佐高信、田中優子)集英社 2012/05
・『歴史の中の遊女・被差別民』(五木寛之、沖浦和光、朝倉喬司、井上章一、田中優子、辺見じゅん、赤坂憲雄)新人物往来社2011/04
・『東アジアの日本観』(加藤周一、田中優子、王敏、楊偉ほか)三和書籍 2010/10
・『アルザス日欧知的交流事業日本研究セミナー「江戸」論文集』(田中優子、タイモン・スクリーチ、マティアス・ハイエクほか)国際交流基金 2010/02
・『拝啓 藤沢周平様』(佐高信、田中優子)イースト・プレス 2008/08
・『国際日本学とは何か?-内と外からのまなざし』(ジョセフ・キブルツ、ヨーゼフ・クライナー、ハルミ・ベフ、ジョイ・ヘンドリー、田中優子、シュテフィ・リヒター他)三和書房 2008/03
・『江戸への新視点』(高階秀爾、陣内秀信、笠谷和比古、水谷三公、延広真治、田中優子)新書館 2006/12
・『共視論-母子像の心理学』(北山修、田中優子ほか)講談社 2005/10
・『メディア・コミュニケーション』(石坂悦男、藤田真文、田中優子ほか)法政大学出版局 2005/09
・『性と文化』(田中優子、山本真鳥ほか)法政大学出版局 2004/03
・『江戸の意気』(田中優子、松岡正剛、きたやまおさむ、篠田正浩ほか)求龍堂 2003/10
・『21世紀 国際社会への招待』(羽場久美子、田中優子ほか)有斐閣 2003/06
・『若衆好み―江戸をんなの色と恋』(白倉敬彦、田中優子)学習研究社 2003/02
・『岩波講座・文学7-つくられた自然』(田中優子、亀井秀雄ほか)岩波書店 2003/01
・『大航海時代の東南アジア2』(共訳:平野秀秋、田中優子)法政大学出版局 2002/03
・『浮世絵春画を読む 下』(白倉敬彦、早川聞多、田中優子ほか)中央公論社 2000/11
・『浮世絵春画を読む 上』(白倉敬彦、早川聞多、田中優子ほか)中央公論新社 2000/11
・『住まいと文化』(高階秀爾、田中優子ほか)住宅金融普及協会 2000/06
・『大江戸生活体験事情』(石川英輔、田中優子)講談社 1999/03
・『地球日本史2』(大石慎三郎、小堀桂一郎、田中英道ほか)産経新聞社 1998/11
・『大江戸視覚革命』(共訳:高山宏、田中優子)作品社 1998/02
・『大航海時代の東南アジア1』(共訳:平野秀秋、田中優子)法政大学出版局 1997/09
・『大江戸ボランティア事情』(石川英輔、田中優子)講談社 1996/10
・『大江戸曼陀羅』(芳賀徹、田中優子ほか)朝日新聞出版局 1996/04
・『東アジア社会と仏教文化』(丘山新、大内文雄、石井公成、章輝玉ほか)春秋社 1996/02
・『物のイメージ 本草と博物学への招待』(山田慶兒、大庭脩、田中優子ほか)朝日新聞出版局 1994/04
・『文明としての徳川日本』(芳賀徹、田中優子ほか)中央公論社 1993/10
・『日本の近世 第11巻』(熊倉功夫、田中優子ほか)中央公論社 1993/01
・『世界都市の条件』(青柳正規、木村尚三郎、小池滋、田中優子)筑摩書房 1992/11
・『南の王国・琉球』(陳 舜臣、高良倉吉、田中優子ほか)NHK出版 1992/06
・『朝日百科・旅の世界史4』(山折哲雄、田中優子ほか)朝日新聞社 1991/09
・『シリーズ変貌する家族2 セクシュアリティと家族』(山田太一、駒尺喜美、田中優子ほか)岩波書店 1991/08
・『巡礼の構図』(松岡正剛、田中優子ほか)NTT出版 1991/03
・『クラブとサロン』(松岡正剛、田中優子ほか)NTT出版 1991/01
・『ニュー・フェミニズム・レビュー1 恋愛における文明と野蛮』(上野千鶴子、森崎和江、田中優子ほか)学陽書房 1990/12
・『日本文学と外国文学――入門比較文学』(中西進、田中優子ほか)英宝社 1990/08
・『内なる壁 江戸時代の外国人像』(平川祐弘、鶴田欣也、田中優子ほか)TBSブリタニカ 1990/07
・『現代日本文化における伝統と変容6・日本人と遊び』(守屋毅、神崎宣武、田中優子ほか)ドメス出版 1989/11
・『おカネと豊かさ』郵政省外郭貯蓄経済研究センター 1988/03
・『朝日百科・日本の歴史83』朝日新聞社 1987/11
・『日本文学研究資料新集8・秋成』有精堂 1987/06
・『日本文学講座 第5巻 雨月物語と春雨物語』大修館 1987/06
・『モダンホラーとUSA』(村上春樹、青木やよい、田中優子ほか)北宋社 1985/06
・『講座・記号論 第4巻 日常と行動の記号論』勁草書房 1982/11
・『日本語と文化・社会 第4巻 ことばとシンボル』三省堂 1977/07
【主な論文・エッセイ等】
・「働くこと、開かれていること」『学鐙』p4-8 丸善 2023冬号
・「文学は「昭和」の虚無をどう書いたか」『ケヤキブンガク』p6-10 水曜社 2023/11
・「新しい戦前と「軍拡を許さない女たちの会」」『人間と教育』p28-35 旬報社 2023/9
・「江戸の虫めづる文化」『虫めづる日本の人々』p8-15 サントリー美術館 2023/7
・「学術と社会」『学術の動向』p46-53 日本学術協力財団 2023/4
・「日本学術会議を知る14・研究者たちの指針としての日本学術会議」『学術の動向』日本学術協力財団 2023/2
・「記憶から創造へ」『新・江戸東京研究の世界』p9-24 法政大学出版局 2023/1
・「石川淳という、多彩なる運動体」(対談:鈴木貞美、田中優子)『アナホリッシュ國文学』白順社 2022/11
・「多様性と熟議」『女性学長はどうすれば増えるか』p69-78 東信堂 2022/7
・「総合知の行方」『IDE 現代の高等教育』p33-36 IDE大学協会 2022/5
・「女性たちが持つ言葉(対談:田中優子、川野里子)『女性とジェンダーと短歌』p125-144 短歌研究社 2022/1
・「浮世絵は動かして見るもの」(対談:松岡正剛、田中優子)『武蔵野樹林9』角川文化振興財団 2022/1
・「遊行する人々を必要とした日本人」京都新聞 2022/1
・「イノベーションに真に必要なこと」『SMBCマネジメント』2021/12
・「自由としての着物」『経済月報』2021/12
・「私が園児だった頃」『幼児教育じほう』2021/12
・「布からみた江戸のグローバリゼーション」p48-57『季刊民俗学』国立民族学博物館 2021/10
・「ポストコロナ時代の大学を考える」p84-89『大学時報』400号 2021/9
・「明治の寄席芸人」解説『明治の寄席芸人』岩波書店 2021/08
・「江戸の夏」『サライ』小学館 2021/08
・「江戸時代に数学が盛んになった四つの理由」『現代思想』青土社7月号 2021/07
・「北斎が生きた江戸時代」『AERAムック』朝日新聞出版 2021/07
・「希望としての大学」『季刊教育法』209号 エイデル研究所2021/06
・自民党憲法改正草案が目指す国の姿」『週刊金曜日』2021/05
・「法政大学での50年」『社会志林』VOL.67.4 法政大学社会学部学会 2021/03
・「言葉の衝撃―新版に寄せて」『いのちを纏う』藤原書店 2021/01
・「仏教と女性解放」『仏教とSDGs』全日本仏教会 2020/08
・「廣末保の仕事」『日本文学誌要』101号 法政大学国文学会 2020/03
・「江戸人たちの驚きの世界」『のぞいてびっくり江戸絵画-科学の眼、視覚のふしぎ』サントリー美術館図録 2014/03
・「江戸の芝居小屋」『歌舞伎─江戸の芝居小屋』サントリー美術館図録 2013/02
・「蔦屋重三郎は何を仕掛けたのか」『その名は蔦屋重三郎』サントリー美術館図録 2010/11
・「「日本」と「国益」-その複数の意味」『国際日本学研究成果報告集』2010/09
・「直き天皇から見えるもの」『国際日本学研究叢書12』2010/03
・「近世文学における主語・近世文化における連」『国際日本学研究叢書10』2010/02
・「江戸時代出現まで」『国際日本学研究成果報告集』2009/10
・「美にあふれる豊かな水の造形」『水と生きる』サントリー美術館図録 2007/06
・「異文化を伝える、ということ」『国際日本学研究叢書7』2007/03
・「木綿から見たアジアと日本」『アジア太平洋研究(成蹊大学アジア太平洋研究センター)』2006/02
・「Tracing the Premodern Roots of Manga」『Japan Echo』2004/10
・「近世遊廓の成立とその文化史――文学・美術・流通から見た社会的・文化的位置づけ」『近世遊廓の成立とその文化史――文学・美術・流通から見た社会的・文化的位置づけ(科研費報告書)』2004/03
・「Development of the Geisha Tradition」『Japan Echo』2003/12
・「歌舞伎で活性化された江戸の生活」『歌舞伎四〇〇年展』図録 2003/07
・「江戸文化から見た母子像」『発達臨床ならびに感性心理学的視点から見る日本の育児文化:親子の分析を通して(科研費成果報告書)』2003/05
・「文学における「影」―その多面性」『日本の美学』ぺりかん社 2002/12
・「庶民文化を作った印刷メディア」『江戸時代の印刷文化』印刷博物館図録 2000/10
・「黄表紙と漫画」『日本の美学』ぺりかん社 2000/03
・「渡れない橋」『日本の美学』ぺりかん社 1998/12
・「Erotic Textiles」『Imaging Reading Eros』Indiana University 1996/01
・「Le Monde Comme Representation Symbolique -Le Japon de l’epoqve d’Edo et l’univers du mitate」『Annales』Vol.50 No.2, Librarie Armand Colin 1995/03
・「A Comparative study of textile Production and trading from the beginning of the 16th century to the end of the 19th century」『法政大学 第一教養部紀要93号』1995/02
・「蔦屋重三郎のネットワーク」『別冊太陽・蔦屋重三郎の仕事』平凡社 1994/04
・「前近代アジアと日本」『思想』岩波書店 1992/07
・「『春雨物語』において“天皇”に託されたもの」『日本文学』日本文学協会 1990/03
・「中国の近世・日本の近世」『試論』第四号 四三舎 1985/11
・「「文」の考察」『試論』第三号 四三舎 1983/09
・「笑い飛ばしてみせようか-平賀源内・戯作と科学」『日本文学』日本文学協会 1982/07
・「江戸十八世紀表現媒体論」『試論』第二号 四三舎 1982/06
・「「海賊」-イデオロギー論としての物語」『試論』創刊号 四三舎 1981/07
・「秋成・亀裂の生成」『日本文学』日本文学協会 1980/05
・「宗貞出奔」『日本文学』日本文学協会 1979/02
・「上方散文考―秋成、たった一人の反乱」『近世文芸ノート』牛王の会 1977/01
・「秋成の多元的世界―『春雨物語』についての一考察」『近世文芸ノート』牛王の会 1976/02
・「散文ノート1―石川淳・上田秋成をめぐって」『近世文芸ノート』牛王の会 1975/05
業 績
日本や欧米における江戸時代の評価が定まっていなかった1980年代に、『江戸の想像力』(1986年度・芸術選奨文部大臣新人賞)をはじめとする江戸時代の文学、文化を論じた著書が大きな影響を及ぼし、日本における江戸文化の見直しが始まると同時に、その影響を受けて、欧米の若い日本研究者が出てくるようになった。
特に「連」という言葉によって表現された、関係とコミュニティによる創造方法の発見は、個人としての天才的創造者にのみ注目する欧米の文化論とは異なる文化創造論、文化社会論を生み出し、多くの人が「連」を使うようになった。
さらに、都市研究者と文化研究者が連携することで、江戸東京を含み込んだ都市論が大きく発展し、江戸時代の循環社会にも注目が集まった。それらは「江戸東京学」として現在もなお、研究が続けられている。氏の研究の特徴は、文学を核にしながら美術、工芸、本草学、科学史、循環経済、社会の成り立ち、都市論、国際交流、海外貿易、国産化と物づくりなどに及んでいることである。江戸時代研究が分野を越えることで、多くの発見を成し得ることを、その仕事で示した。
また、江戸時代の文学や布の生産、陶磁器などの文化において、中国、韓国、ベトナム、インド、東南アジア諸国との関係を視野に入れていることもその特徴で、江戸文化研究を比較文化研究として開いていった。その比較文化の視野から、中国や韓国の江戸時代研究者が育っている。
著書、論文、講演、新聞連載、メディア等における発言では、江戸時代の価値観から、近現代の政治、経済、教育の価値観を相対化し、批判する視座を持っている。江戸時代研究が閉じられた専門研究にとどまらず、現代社会を広い視野で批評的に思考する場となり得ることを示したことは、特筆に値する。
大学行政においては法政大学大学院の運営委員長、社会学部長、総長(学長と理事長を兼ねる職種)を歴任し、大規模私立大学初の女性総長としてその職務を全うした。総長在任中も、軍事研究、科学研究費、学術会議などについて、政府及び国会議員に対して意見を表明し続けた。その間、私立大学連盟において、方針や声明をまとめる職務に尽力し、コロナの経験を経たのちの私立大学設置基準の見直し提言は、一定の効果を及ぼした。2021年に総長を満期退職したが、私立大学のありようは今後も見直しが継続されるであろう。
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