田中裕也氏【ガウディ研究者・建築家】 国際部門

 

受賞年月

平成30年2月

受賞理由

ガウディ研究の世界的な第一人者として、長年に亘るガウディの建築物の実測と図面作成を通じ、謎に満ちたガウディ建築に込められたデザイン・構造・神話、さらに地域性やアイデンティティの解明に寄与した数々の功績。 

受賞者の経歴

【主な職業】
ガウディ研究者・実測家・建築家
AC.ORIOCC & Hiroya Tanaka代表

【学  歴】
1971年 広池学園麓澤瑞浪高等学校卒業
1975年 国士舘大学工学部建築学科卒業
1991年 カタルーニャ工科大学バルセロナ建築学科大学院卒業
1992年 カタルニア工科大学バルセロナ建築学部より、建築家工学博士号を取得

【学位・称号】
建築家・工学博士 

【経  歴】
1975年 日吉建築事務所入社
1978年 日吉建築事務所退職
1978年 バルセロナに渡り、ガウディ建築の実測を開始する
1988年 Asociación Cultura Gaudí Club 設立 (Barcelona)
1991年 ORIOCC,S.L設立
2003年 カタルニア工科大学バルセロナ建築学部、九州芸術工科大学(現九州大学芸術工学部)、ガウディ・クラブ文化協会との国際共同研究協定を結ぶ
2014年 埼玉県上尾市に「田中裕也建築研究所」を開設
2015年 ORIOCC & Hiroya Tanaka 開業

【過去における表彰
1980年 スペイン国費留学生
2004年 スペイン王子賞芸術部門にノミネート
2015 年 バルセロナ日本総領事公官賞
2016年 第10回ガウディ・グレソール賞 (X premis Gaudi Gresol )  

【著  書】
『ガウディの建築実測図面集』彰国社 1986年
『アントニオ・ガウディとその師弟たち』」SD鹿島出版 1988年
『Gaudi y la Mesura』Gaudi Club 1991年
『ガウディの独り言』京都書院1998年
『ガウディの独り言』アートダイジェスト 2001年
『実測図で読むガウディの建築』彰国社 2012年
『ガウディ・コード、ドラゴンの瞳』長崎出版 2013年

【主な作品】
1992年 「ダニエルの家」(バルセロナ)設計

1999年  “ロカの家”(シチェス)住宅計画
2001年 カサ・ボスク住宅計画(マスナウ)
2004年 リウドムス広場計画(リウドムス町)
2004年 北海道江別市にスズラン・ボベダを計画施工
2007年 アルブレ広場オープン、メキシコのトルーカ市でモニュメント設置
2000年 全北国立大学2000/記念広場計画(韓国)
2012年 府中市の北山幼稚園計画 

【主な作品展】
1998年 スペイン国政府主催ガウディ展(東京ビッグサイト)に国賓として招請

1999年 全北国立大学(韓国)主催の田中裕也作品展と講演会
2002年 ジローナ州立美術館にて田中裕也展
2002年 アントニオ・ガウディ財団主催の田中裕也展(スペイン・リウドムス)
2015年 バルセロナ建築士協会主催の田中裕也作図展示会
2015年 東京都銀座渋谷画廊にて田中裕也作図展示講演会
2016年 愛知県常滑市INAXライブミュージアム10周年特別展『つくるガウディ-実測で読み解く』(11月~3月)  

受賞者の業績

氏の業績は、次のとおりである。 

世界遺産に数多く登録されているガウディの建築物、サグラダ・ファミリア、カサ・ミラ、カサ・バトリョ、グエル公園など、その創造性豊かで謎めいた建造物は、100年以上に渡り多くの人を惹きつける魅力に溢れている。しかしその建造物には謎が多く、図面も殆ど残されていない。
氏は、スペイン国バルセロナに住みながら、ガウディ建築物を何十年もかけて実測とその図面化を行った。特にサグラダファミリアの実測図(1/50の断面アイソメ図)には5年,グエル公園の全体立面図には8年の年月を費やすなど、ガウディの主要作品10点の建築図面を実現するという世界的な偉業を成し遂げた。さらに、実測の過程において、ガウディ建築に込められたデザイン・構造・神話,さらに地域性やアイデンティティを縦横に読み解き、氏は世界で唯一、ガウディの建築図面を持つガウディ研究の第一人者として世界的に認められている。

このガウディ研究を生かして、世界各地において60回以上に及ぶガウディ建築物の実測、歴史、コード、作図に関する展示会・講演会を通じ、ガウディ建築の魅力を伝える一方、これまでに培ったガウディ研究を広く還元するため、まちづくりワークショップ活動に参画し、ガウディ建築物の実測と作図から読み取れたコードを利用したまちづくりを推進した。
特に建築計画にあたっては、ガウディ建築の煉瓦構造を応用し、使用した素材を生かすなど、ガウディ研究で得られた成果を積極的に取り入れた。
1993年ICOMS主催によるQuretaro(Mexico)での国際会議に招請され、ガウディ建築作図展と講演会を開催した。
1997年IOCOMS会長José Correaからの依頼により、ペルー・リマにおいてガウディ特別講演会を実施し、翌日には世界遺産であるSacusaywama, Machupichu, Ollaytambo, Tambomachaiの実測の許可を受けてその調査を実施した。
1998年からForum UNESCOの招請を受けて、ベラクルスのサン・ホワン・デ・ウルワの城塞の一部地盤沈下による修復計画(Taller de restauración de Baluarte de San Juan de Ulua)でのワークショップを開催した。1999年バルセロナ近郊のリゾート地シチェスでの「ロカの家)」の個人住宅計画では、ガウディの特徴である自然の景観を取り込んだボールト(アーチを基本にした曲面天井の総称)による演出を行った。続いて、2001年バルセロナ近郊の港町マスナウでの「カサ・ボスク」の住宅増改築計画では、画家の工房としては狭い80㎡という限られたスペースの最大限の利用法として、無柱で煉瓦造さらに伝統構法によるボールトを取り入れ、画家のオーナーの希望を満たす大空間を実現した。
2004年、これら経験を生かし、日本においてもこの類の煉瓦構造を披露するため、北海道江別市セラミック・アートセンターの建築計画において、スズラン・ボールト(BT1)の名を付した煉瓦構造を演出した。2007年メキシコ・トルーカのメキシコ州立自治大学でのワークショップとモニュメント製作を実施した。ワークショップではテオティワカンでの実測調査も実施し、ガウディ自らも推薦している素材「石灰モルタル」を発見した。
2004年バルセロナの南120kmにあるガウディの生まれ故郷リウドムス町の町長ホセ・マリア・バジェ氏から依頼されたガウディ生誕150周年記念事業の一つ、街はずれの小さなアルブレ広場を利用した「リウドムス広場拡張計画」では、ガウディ研究を生かすとともに日本文化を演出した。完成した広場には、大阪の造園会から寄贈された日本を代表する7種類150本もの見事な桜が咲き、日本とスペインの文化が融合した広場が生まれた。
2012年東京都府中市にある学校法人山縣学園北山幼稚園の新築計画を手掛けた。北山幼稚園は子供の個性を伸ばすため、モンテッソ-リ教育法を取り入れているユニークな幼稚園である。この新築計画のコンセプトは今までに類のない「卵」とし、子供達、先生そして父兄達も加えてのワークショップから始めた。その成果を活用するとともに、煉瓦造、鉄筋コンクリート造、鉄骨造の3つの構造体を取り入れ、煉瓦造はガウディのデザイン手法となる伝統構法を生かしたデザイン・設計施工となった。
2015年バルセロナ建築士会主催の作図展やサロン・デ・マンガの作図展、続いて2016年には、銀座の渋谷画廊にて、ガウディ建築の作図展を開催した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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