水谷 修【名古屋外国語大学大学院国際コミュニケーション研究科長・教授】 国際交流部門

 

受賞年月

平成13年1月

受賞理由

多年、日本語の研究と教育を通じて、日本に対する国際理解を深めた功績

受賞者の経歴

【学歴】
昭和31年  3月 名古屋大学教育学部卒業
【現職】
名古屋外国語大学大学院国際コミュニケーション研究科長
名古屋外国語大学国際コミュニケーション研究所長
【職歴】
昭和31年  4月 国際基督教大学語学科助手(昭和35年10月迄)
昭和35年11月 千葉大学文理学部助手(留学生課程担当)
昭和37年  3月 千葉大学文理学部講師(昭和38年2月迄)
昭和38年  4月 スタンフォード大学日本研究センター語学課程主任
昭和48年  9月 アメリカ・カナダ12大学連合日本研究センター副所長(昭和49年3月迄)
昭和49年  4月 国立国語研究所日本語教育部日本語教育研究室長
昭和51年10月 国立国語研究所日本語教育センター日本語教育研究室長
昭和52年  4月 国立国語研究所日本語教育センター日本語教育研修室長
昭和55年  4月 名古屋大学総合言語センター教授
昭和58年  4月 名古屋大学大学院文学研究科担当
昭和63年  4月 名古屋大学大学院文学研究科日本言語文化専攻担当
昭和63年11月 国立国語研究所日本語教育センター長
平成  2年  4月 国立国語研究所長(平成10年3月迄)
平成10年  4月 国立国語研究所名誉所員
同        名古屋外国語大学大学院国際コミュニケーション研究科教授
同        名古屋外国語大学国際コミュニケーション研究所長
平成10年11月 名古屋外国語大学大学院国際コミュニケーション研究科長(現在に至る)
【公職歴】
昭和48年  4月 文化庁「日本語教育推進対策調査会」委員
同        厚生省社会援護局「中国帰国者自立研修センター再研修カリキュラム委員会」委員(平成9年迄)
昭和50年  4月 文化庁文化部国語課「外国人のための基本語用例辞典第2版」編集校閲委員
昭和54年  4月 文化庁「外国人の日本語能力に関する調査研究協力者会議」委員
同        国際交流基金「日本語教育懇談会」委員
昭和55年  4月 「外国人の日本語能力の標準と測定に関する作成部会」委員
昭和55年  4月 (財)アジア福祉教育財団難民事業本部「インドシナ難民に対する日本語教育の充実振興に関する懇談会」協力者
同        国立国語研究所「日本語教育研究連絡協議会」委員(昭和59年迄)
昭和58年  4月 名古屋大学「国際交流促進調査研究委員会」委員
昭和61年  4月 (財)名古屋国際センター「運営委員会」委員(平成10年迄)
昭和62年  4月 通産省「言語技術研究会」委員
昭和63年  4月 文部省学術国際局「日本語学校の標準的基準に関する調査研究協力者会議」委員
平成 元年  4月 文化庁文化部国語課「専門学校進学希望外国人用日本語教育指導の手引作成会議」主査
平成  2年  4月 (財)日本語教育振興協会理事(現在に至る)
同        文化庁国語審議会委員(現在に至る)
平成  3年  4月 国際交流基金日本語国際センター「事業協力委員会」副委員長
同        国際交流基金「外国人日本語能力試験企画小委員会」委員
同        NHK放送用語委員会委員(現在に至る)
同        (財)地球産業文化研究所「『地球時代の日本語を考える』研究委員会」委員
同        平成  4年  4月 文部省学術国際局「日本語教育推進施策に関する調査研究協力者会議」試験改善等ワーキンググループ委員
同        文部省学術国際局「学術審議会」専門委員(現在に至る)
同        国立国語研究所「技術研修生のための日本語教育の標準的カリキュラム等の作成に関する調査研究協力者会議」主査
同        国際交流基金北京日本学研究センター協力委員(現在に至る)
同        NHKインターナショナル理事(現在に至る)
平成  5年  4月 (財)日本語教育振興協会「日本語教員研究協議会」委員
同        国際交流基金日本語国際センター「国際懇談会」委員
同        (財)日本国際教育協会「外国人日本語能力試験実施委員会」委員(平成6年迄)
同        (財)日本語教育振興協会評議員(平成8年迄)
同        国際交流基金日本語国際センター「外国人日本語能力試験実施委員会」委員(平成8年迄)
同        最高裁判所「司法修習生考試委員会」委員(現在に至る)
平成  7年  4月 国際交流基金日本語国際センター「事業協力委員会」委員(平成9年迄)
同        (財)国際文化フォーラム評議員
平成  8年  4月 現代子ども国語表現力研究会顧問
同        文化庁文化部国語課「高度情報化に対応した日本語教育の在り方に関する調査研究」協力者
(平成9年迄)
同        文化庁「ことば」シリーズ編集委員会委員
同        国文学研究資料館評議員
同        日本貿易振興会「ビジネス日本語能力テスト実施委員会」委員(現在に至る)
平成  9年  4月 文部省初等中等教育局「中央教育審議会」臨時委員
同        国際交流基金「海外日本語普及事業」協力委員(現在に至る)
同        文化庁文化部国語課「中国帰国者に対する日本語通信教育運営会議」委員
同        文部省「教育課程審議会」臨時委員
平成10年  4月 文化庁文化部国語課「今後の日本語教育施策に関する調査研究協力者会議」委員(現在に至る)
平成12年  7月 第18期日本学術会議委員(平成15年7月迄)
【学会】
昭和52年より   (社)日本語教育学会常任理事・理事・評議員・各種委員を歴任(昭和54年迄)
昭和63年  4月 国語学会評議員(平成12年5月迄)
平成  6年  6月 国語学会理事(平成12年5月迄)
平成  7年  2月 (社)日本語教育学会理事(現在に至る)
平成  7年  4月 日本音声学会国際交流委員長
平成  9年  4月 (社)日本語教育学会長(現在に至る)

受賞者の業績

氏は、外国人に対する日本語教育の普及を通して、日本及び日本語・日本人に対する国際理解を深め、日本人自身の異文化と自文化に対する意識を高める上で、顕著な業績をあげている。
(日本語教授及び教材開発)
氏は、まず、国際基督教大学、アメリカ・カナダ12大学連合日本研究センター(当時)など、多くの教育機関において外国人に対する日本語教授に従事し、また、それぞれの機関におけるカリキュラム開発と教授体制の確立に尽力した。
それらの経験を踏まえて著わされた『An Introduction to Modern Japanese』(共著;1977年)等の日本語教科書は、標準的教材として、全世界で広く使用されている。さらに、『外国人のための基本語用例辞典』(文化庁1975年)をはじめ、公的機関・団体による刊行物編集にも多く参加し、現在も『日本語教育辞典』(社団法人日本語教育学会)の改訂において編集委員長の任にある。
(日本語研究)
日本語教育のための研究においては、特に音声学と音声教育に関する研究において先駆的役割を果たし、今日基本図書として参照されている『音声と音声教育』(文化庁1970年)等、多くの業績を発表している。また「日本人の知識階層における話しことばの実態」(報告書1980年)等、多くの科学研究費研究プロジェクトにおいて指導的役割を果たしており、特に、主査を務めた新プログラム研究「国際社会における日本語に関する総合的研究」(国立国語研究所1995~1999年)は、国内外の研究者を糾合し日本及び全世界における日本語の使用状況や使用者の意識を把握した画期的な大規模研究である。
(研究者養成)
名古屋外国語大学大学院国際コミュニケーション研究科の創設に携わり、多くの優秀な研究者を育成するとともに、後続の諸大学に対して大学院教育の範を示した。現在も、名古屋外国語大学大学院国際コミュニケーション研究科長として、引き続き研究者の育成に当たっている。
(言語施策・言語教育施策への参与)
早くから、文部省・文化庁の国語施策・日本語教育施策立案に助言を行っており、学術審議会専門委員、文部省教育課程審議会臨時委員、国語審議会委員、「今後の日本語教育施策の推進に関する調査研究協力者会議」委員等を歴任する一方、平成3年からは8年間にわたって国立国語研究所長を務め、日本語教育研究の学問領域としての確立をはじめ、現代日本語研究の推進に大きく貢献した。
(学会活動)
社団法人日本語教育学会において、常任理事、理事、評議員、各種委員会委員を務め、平成9年からは会長の職にある。日本音声学会、国語学会においても役員を歴任している。
国際交流基金日本語国際センターの設立以来、「事業協力委員会」副委員長、北京日本学研究センター協力委員等として、日本語の国際的普及事業に助言と協力を続けている。また、国際交流基金と財団法人日本国際教育協会が実施している「日本語能力試験」に関して、その創設・実施を指導し、世界的に日本語学習の標準を示した。
(日本語に対する認識の普及)
日本放送協会放送用語委員会委員としてマスメディアで使用される日本語のあり方を助言する一方、NHK「生きていることば」に出演し、一般国民に対して、日本語への意識を喚起し基礎的な知識を提供する役割を果たした。著書としても、『Nihongo Notes』において日本語の特色や日本の言語文化に関する知識をわかりやすく提供し、同書は当初の英語版に加えて日本語・スペイン語・フランス語・タイ語・中国語・韓国語に翻訳され、日本語及び日本に対する国際的な理解を高める上で大きく貢献した。
上記のとおり、氏は、永年にわたり日本語教育の普及と適正化に務め、日本語教育を単なる語学教育を超えた国際理解と文化的アイデンティティ確認の場として確立することに貢献してきた。日本人の国際化が強く求められる現在、その一つの手立てを明確に示し、多くの後進を導いた功績は誠に顕著である。

授賞理由

氏は、多年、日本語の研究に専念し、さらに外国人に対する日本語教育の普及を通じ、日本語及び日本人に対する国際理理解を深めてきた。
氏はとりわけ音声学と音声教育に関する研究において先駆的役割を果たし、その業績は基本図書として国内外の多くの日本語研究者の先駆的役割を担っている。また、日本語の教育とりわけ教材の開発や教育カリキュラムと教授体制の確立に寄与し、辞典の編纂やそのための刊行物の編集委員としてその重責を担ってきた。また、大学や国立国語研究所等における教育研究活動や大学院研究科の創設(名古屋外国語大学)をはじめ、国際交流基金日本語センターの設立、日本国際教育学会の「日本語能力試験」の創設・実施を指導するなど、氏の活動成果は極めて大きい。
本会も、中国おいて「日本語弁論大会」を共催し第7回を迎えたが、このように氏に代表される先駆者の業績なくして国際交流の基軸は得られないと考える。従って氏の業績への評価は高く、益々の研鑽が期待されている。


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